64km/hオフセットクラッシュでもドアが開く! SUBARUの次の目標「歩行者死亡事故の軽減」は達成するか?

 

我々の目の前で40%オフセット前面衝突実験では、64km/hでバリアに衝突させました。フロント周りのバンパーはもちろん外れ、エンジンルームは衝突部分が大きくキャビン側に縮んでいます。ボンネットは根元の部分がせり上がり、ヒンジの取り付け部分からくの字に曲がって衝撃を逃しているのがわかります。しかし、そうした変形はフロントドアの直前まで。ピラー部分やドアは左右ともにしっかりと元の形を残しています。

 

この状態で運転席のドアを開けても、何事もなかったくらいに開いてくれます。衝突で気を失ったドライバーを外部から助け出すこともできるわけです。

 

次に歩行者エアバッグのデモンストレーション。通常に開いたと想定した実験では、一瞬で展開。手品のようにそこになかったものが一瞬にして現れるくらい人間の視力を超えた速さです。

この歩行者用エアバッグは、他車との違いはエアバッグが単体で展開すること。他車ではボンネット後端を一瞬にして浮き上がらせその隙間からエアバッグを展開させます。

SUBARUではボンネットを浮き上がらせることなく展開させるためコスト低減が図れ、全車標準が可能になっています。

また、人間じゃないものにぶつかって展開するのも困ってしまいます。今回はスーパーのカートにペットボトルの水を積んだものに30km/hで衝突させて実験。カートは跳ね飛ばしましたが、エアバッグは展開しなかったことを確認しました。

もうひとつの「人間じゃない対象」である「水」でも実験。普段は水没した際の安全性を確認するプールへ飛び込み、その衝撃で歩行者エアバッグが展開しないかを見せていただきましたが、想定どうりの結果でした。

 

今回の公開実験はすべてがうまく行きました。開発中のものを見せてもらう際には、ときどき「まだ開発中ですから」という注釈が添えられることも多いですし、働かないこともあります。それに、実験には失敗がつきものです。けれど、それを大勢の報道陣の目の前で披露することはよほどの自信があるんだな、と思いつつ、はたと気づきました。

人の命を守るということはそれ以上のことなんです。事故は偶然が重なって起きるといいますが、人を守るデバイスには偶然があってはダメなのです。環境が整っているのに何度かに一回は失敗するような商品を世に出すようでは、安心を届けていることにはならないはずです開発者にとってはこちらが思う「実際に験す=実験」というレベルではなく、「当然の動き、機能の再現」だったのでしょう。

SUBARUが「安心と愉しさ」を確実に自信を持って製品化しているという姿勢が、今回の「再現」から改めて見ることができました。その自信が消費者にも届いているんだとも感じました。

(clicccar編集長 小林 和久)

この記事の著者

編集長 小林和久 近影

編集長 小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務める。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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