スイフトよりも小さなダイハツ・ブーンが910〜960kgであることを考えると、840kg〜970kgという新型スイフトの車両重量は信じられないほど軽いです。なお、最大120kgのダイエットのうち、ボディが約35%、足まわりが約15%、内装部品とシート、エンジンがそれぞれ約10%、ドアが約5%、外装部品が約5%、その他が約10%となっています。
撮影のため外した運転席のヘッドレストのあまりの軽さと、荷室のトノカバーのあまりの薄さに驚かされましたが、なんとトノカバーに関してはもっと軽くする検討をしたほどで(今回は見送られたそう)、スズキの軽量化に対する執念を改めて認識。
軽くすれば燃費と動力性能に好影響を与える反面、乗り心地や騒音対策では不利になるのが一般的。動力性能(燃費を含む)と快適性(乗り心地や静粛性など)という、相反する要素を両立するのは困難になります。
これが純粋なスポーツカーであれば快適性にはある程度目をつぶってもらえるものの、走りが自慢のスイフトとはいえ、数が出てなんぼのコンパクトカーですから難しいところ。
実際の乗り味は、スポーティな走りを指向することもあって足まわりは適度に引き締められていて、街中でも高速道路でも微少な突き上げを感じることが多く感じられます。これは185/55R16サイズを履く「RS」系やマイルドハイブリッドだけでなく、175/65R15タイヤを履く「XG」系でも共通するテイスト。
しかし、国産コンパクトカーの中でも決して乗り心地が悪いわけではなく、マイナーチェンジでNVH性能を引き上げたマツダ・デミオには少し及ばないかな、という程度。また、ストップ&ゴーを繰り返すタウンスピードでこもり音が侵入してくるのも少し気になりますが、こちらも重箱の隅を突っつくような指摘かもしれません。
快適性の確保では難しさが残るものの、プラットフォームを一新するようなフルモデルチェンジでないとこれほどの軽量化は無理。そうなると、まずは良好なベースを手にしたといえるはずで、すでに実現している活発な走りも含めて新型スイフトの実力は相当に高いといえますし、今後のモデルサイクルを通じての熟成にも大いに期待できます。
(文/塚田勝弘 写真/小林和久)