次はいよいよ聖地・榛名山の駐車広場から、ステアリングとアクセルに力を込めて、ダウンヒルへ突入です。ようやく重ステにも慣れてきたので、ヒール&トゥをぎこちなくかましながら、気分だけは藤原拓海君になりきります。
下りでは、エンジンブレーキが良く効くため、スピードのコントロールがしやすいですネ。 コーナー手前でヒール&トゥを仕掛けて、減速とエンジン回転とギアがバッチリ決まった時は、クルマがコーナーに吸い込まれていくような感覚が味わえます。個人的には、これがマニュアルを運転していて一番幸せを感じる瞬間です。
またトレノは本当に運転しやすく、ヒール&トゥも決まりやすいことに気づきました。FRらしく真正面に配置されたペダルやスポーツカーとしては高めの着座位置、回転に応じたパワーを発揮する1.6Lエンジンなどの総合バランスが、山坂道で絶妙にマッチしているのです。
もちろん筆者は、頭文字Dで繰り出されるような走りは到底無理。でもFRがもたらすナチュラルなハンドリングや己の四肢に力を込めてクルマを操る一体感、そしてダウンヒルで高回転型のNAエンジンをあおる感覚は、まさしく昭和のパッションそのものでした。
ただこれらは、FFベースで操作性と快適性、更にエコを重視する現在のクルマが失ってしまったもの。そんなトレンドの中で、FRでNAエンジンと四肢を駆使する楽しさを大切にするトヨタ86&スバルBRZやマツダロードスターには、心底敬意を表したいと思います。