アンベールされた新型「CX-5」の詳細を見ていこう。一番の見どころは、マツダを代表するボディカラーとなった「ソウルレッド」の新色だ。従来は、「ソウルレッドプレミアムメタリック」だったが、新型「CX-5」では「ソウルレッドクリスタルメタリック」となった。最大の違いは、赤の「深み」だ。従来のソウルレッドにはオレンジがかった色味が入っていたのだが、新しいソウルレッドは光の明暗によるコントラストが強く出る。明るい部分はキラッと輝く、暗い部分はワインレッドのような深みのある赤なのだ。「CX-9」の新色であるマシングレーに使われたアルミフレークを入れ込んだ塗装が、この色合を出している。一番下にあたる反射・吸収層に、高輝度アルミフレークを均質に並べつつ、光吸収フレークを併用することによって、わずか三層の塗装で、複雑な色合いを実現している。
「色味そのものは変化させていませんが、輝きの部分を強調し、影になるところの深みを増し、明度差を広げました。フロントのシャープなエッジが、徐々に曲率が大きくなって、リアフェンダーへと変化していく。そのようなひとつの塊の、面による変化が映えるボディカラーを選んでいます。キャラクターラインにたよらず、面の変化によってもたらされる光の変化による動きを表現しました」と、デザイン部本部長である中牟田泰氏は言う。
初代「CX-5」の登場時、マツダにSUVのイメージがなかったため、あえてSUVらしい押し出し感のある顔立ちを採用した。一方、新型はひとめでマツダとわかるシャープな造形のフロントランプが採用されている。見た目の重心を下げて、安定感を高めて、ホイールアーチからボディサイドへと滑らかに連なる面によって、踏ん張り感を増している。
もう一つの注目は、クラスにふさわしい室内空間だ。初代「CX-5」ではお世辞にも高級感があるとは言いがたかった。その後、「デミオ」や「CX-3」あたりから、インテリアの質感がぐっと高まったことはご存知の通りだ。「新型CX−5では、立体の強さを出しました。ベンチレーショングリルなども、ぐっと収めて、奥行きを出しています。ドアとインパネの端境の一体感にも注力しました。共用パーツも活用しつつ、クルマの個性にあわせて作り分けています」と、中牟田氏。
実際に室内に乗り込むと、全体にまとまり感があって、素材の質感も高い。インパネからドアトリムまで連なる一体感があって、SUVらしい視点の高さと合わせて開放感が高い。一方で、ウェストラインから下を引き締めることにより、ドライバーオリエンテッドの印象も残している。
もうひとつのトピックスは、「SKYACTIV-D 2.2」のクリーンディーゼルが北米に初導入される点だ。フォルクスワーゲンのディーゼル問題で揺れる中、あえて投入するからには排ガス規制への適合には心を砕いたようだ。実際、北米モデルでは後処理装置に尿素SCRを搭載し、厳しい北米の基準をクリアする。加えて、「SKYACTIV-G 2.0」と「SKYACTIV-G 2.5」の2種のガソリンエンジンを搭載する。
「初代CX-5のお客様が、再び、新型を選んでくださるためにクルマを成長させました。ボディ骨格の構築、騒音や振動の低減、乗り心地の向上といった基本となる部分の向上に加えて、ドライバーが運転して楽しいのはもちろんですが、同時に、助手席や後席の人の快適性を阻害しないクルマ作りを目指しました」と、商品開発担当の児玉眞也氏は語る。
そのため、マツダが独自に開発した車両運動制御技術である「SKYACTIV-VECHICLE DYNAMICS」の第一弾である「G-ベクタリングコントロール」を搭載している。人間が感じる微小なGを検知し、ドライバーの操舵に対してエンジンの駆動トルクを変化させて、前後・左右のGを統合制御するシステムである。「トルクベクタリング」とどこが違うかというと、山道でかっ飛ばすようなシーンで大きなGの入力を検知して、左右の駆動力の配分を変化させて、よりクルマを曲げやすくするシステムだ。それに対して、Gベクタリングコントロールは、町中を走るような小さなG変化でも、滑らかな動きになるように制御しているという違いがある。
初代は、日本のクリーン・ディーゼル市場に風穴と空けたと同時に、マツダにSUVのイメージを植え付けた立役者だったが、新型となり、よりマツダ・デザインが際立つ個性派のクロスオーバーへと変革したのだ。
(文:川端 由美)
[Photo by Victor Decolongon/Getty Images for Mazda Motor Co.]