マツダCX-5の開発者に聞いた、新型CX-5の本当の狙いは?

ただ、屋台骨を支えるモデルとなると、たいていはフルモデルチェンジの際に、保守的な変更をうけることになる。一方で、新型「CX-5」は次世代に向けての進化の方向性を示すモデルともなるワケで、がぜん、新世代のマツダのデザインがどう変わるのか、期待が高まる。

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ショー開幕前夜、インヴィテーションに書かれた住所を頼りに、デザイン部門のプレゼンテーションが行われるハリウッドにあるスタジオに向かう。赤いライティングが印象的なステージに、デザイン部門を率いる前田育男氏が登場した。マツダのデザイン部門は、現フォードのチーフ・デザイナーであるモーレイ・カラム氏のあと、現ルノーのデザイン部門を率いるローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏と、世界に名を轟かす外国人の著名デザイナーが続いていた。今から思うと大変失礼な話だが、2011年にヴァン・デン・アッカー氏が、ルノーの鬼才として名高かったパトリック・ルケモンの後を継ぐ形で移籍したあと、果たして、久方ぶりに登場する生粋の日本人デザイナーに、いったいどれほどの仕事ができるのか、と世界中の注目が集まったのは、ごく当然のことだった。今となってはまったくの杞憂なのだか、当然、案じる声も小さくはなかった。

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しかし、いい意味で期待は裏切られた。前田育男さんが打ち出した魂動デザインは、瞬く間にグローバルで評価を得た。車種ごとのデザインが優れるだけではなく、マツダというブランド全体を通して、一本の軸が通った個性を放っていた。
「『人馬一体』というキーワードを軸に、グローバルで通用するデザインを目指しました。力強く、ダイナミックで、魂の存在が感じられるデザインとして、ソウル・オブ・モーション、魂動という表現をしています」と、前田さんは語る。

前田さんは、クルマをデザインしない。人の手でしか生み出すことのできない、人の心を打つフォルムにこだわり、最終的にクルマのデザインに落とし込んでいく。マツダの中では”御神体”と呼ばれるフォルムがあり、これをベースに、各モデルのチーフ・デザイナーが個々のクルマのキャラクターに落とし込んでいく。だからこそ、マツダ・デザインは一貫したDNAを感じるのだろう。

この日、新たに次世代のマツダ・デザインを占うキーワードとして打ち出されたのは、「CAR AS ART」という言葉だ。これまでのDNAである魂動デザインの基本は受け継ぐが、さらにデザインのクオリティをアーティスティックなレベルに高める方針だ。とはいえ、工業製品であるクルマを、一点ものであるアートの次元まで高めるというのは、並大抵のことではない。もちろん、デザインだけではなく、匠と呼ばれる経験豊かなモデラー、生産現場までが一丸となって取り組むのだという。