廃食用油からバイオディーゼル燃料を再生する事業が各地で行われていますが、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)は、イオン交換樹脂を使用したバイオディーゼル燃料の製造装置を新たに開発。種子島でバイオ燃料の地産地消を実証すると発表しました。
NEDOのイオン交換樹脂を使用したバイオディーゼル燃料の製造装置は、NEDOプロジェクトに参加したエプシロン、東北大学、特定非営利活動法人こすもすが共同で新開発しもので、現行のバイオディーゼル燃料再生事業で問題となっていた点を解決することができます。
現行のバイオディーゼル燃料再生装置はアルカリ触媒を使用しており、
①回収した廃食用油の品質が悪いと、再生燃料の原料に使えない
②製造された再生燃料の品質が不安定
③副生される石鹸の水洗浄が必要
④残留するアルカリ混入グリセリンの処理が必要
という問題があります。
今回開発されたNEDOのバイオディーゼル燃料製造装置はイオン交換樹脂を使用しており、2本のカラムを直列に連結し、1つ目のカラムには酸触媒の機能を持つ陽イオン交換樹脂を充填し、2つ目のカラムにはアルカリ触媒の機能を持つ陰イオン交換樹脂を充填してあります。
まず1つ目のカラムの陽イオン交換樹脂が不要な石鹸のもとになる遊離脂肪酸を再生燃料に転化。ほぼ100%の転化率で変換します。このとき発生する水はイオン交換樹脂内で吸着され、溶液中から除去されます。
続いて、2つ目のカラムでは陰イオン交換樹脂で、残った油脂のほぼ100%を再生燃料に転化し、このとき副生されるグリセリンはイオン交換樹脂内に吸着して除去されます。
その結果、従来の再生方法では転化率を高めるために必要だったメタノールの過剰添加をせずに、遊離脂肪酸と油脂が再生燃料に完全に変換され、副生物の全てを完全に除去することができました。
このためカラムから流出する溶液の成分は、バイオディーゼル燃料となる脂肪酸エステルと微量のメタノールのみとなり、製品タンクに貯留された再生燃料をそのまま車両の燃料タンクに注入することができます。
NEDOでは今後、「地産地消に適したバイオディーゼル燃料生産事業の新たな分散型システムの確立」を目指しており、この離島型バイオ燃料生産システムを実験地の種子島以外へも拡大することを図りたいとしています。
(山内 博・画像:NEDO)