では、なぜ走り続けなかったのか? 遅くなっただけなら、止まらなくたっていいんじゃなかったのか?という疑問もわきます。
不具合発生時、原因が特定されていない段階で、低下したエンジン出力を回復させるべく制御系の設定変更が試みられた。結果的には#5号車はファイナルラップを走り切ることが出来る状態となったものの、その対応には時間がかかり、規定されている6分以内にファイナルラップを終えることが出来なかった。
「制御系の設定変更が試みられた」のが、中嶋選手がピットの目の前で5号車を止めたことだと思われます。クルマが停まってしまったのではなく、遅くなったので止めたのです。ターボからの圧縮した空気がエンジンに入って行ってないくらいがわかっていたことかも知れません。そこでエンジン制御系をすべてストップさせ、設定を見直してリスタートさせようとした。ただ、ピットインしていては1分30秒くらい後ろから迫るポルシェ2号車に抜かれるのは確実。そうすると絶対使命である優勝はその時点でなくなるも同然。そのためにピットからも見えるコース上ストレートにクルマを止めたのでしょう。
恐らく、それでも「吸気ダクト回りの不具合」という機械的なトラブル(恐らくパイプが抜けたとか壊れたとか)が直るはずなく、パワーが出ないまま走り出した。もう一度、数百メートル走ってからリスタートしたものの、状況は変わらなかった。
結果、そのまま1周したものの規定の6分以内に帰ってこられませんでした。ということでしょう。
「たら・れば」で考えると、ゴールラインの手前で止まっていれば、あと1周が数メートルとすることもできたことで2位なったかもしれません。しかし、ピットの目の前で止まっていればより状況もわかるかも知れないと考えれば選択肢としてナシです。2位じゃダメなんです。実際、2位は6号車が取ることができたのです。
あのまま走っていても恐らく2位になったでしょうからその選択肢もナシですね。
さらに以下のような発表も付け加えています。
このトラブルの真因については現在ドイツ・ケルンのトヨタ・モータースポーツ有限会社(TMG)にて詳細を調査中。
尚、今回の原因が、第2戦スパ6時間レースでのエンジントラブルとは無関係であることは明らかとなっている。
今後、同様のトラブルの再発防止のため、TMGで徹底的な原因究明調査を進めている。
24時間戦って買ったポルシェにはやはりそれなりの歴史と経験があったと言わざるを得ません。そこに2位にしかなれないトヨタとの違いと厳しく言えばその通りでしょう。
しかし、今回の経験がきっとトヨタを強くするはずです。そして、来年のル・マンでは24時間後に今度は嬉しい涙を流すに違いないでしょう。
(clicccar編集長 小林 和久)
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