山本:マルケス選手は最近肘を擦って走る程、深いバンク角で走っているようですが。
宮城:僕がRC213Vに乗って膝は擦っても、こんな深いバンク角には到底なりませんでしたよね。
山本:こういう乗り方が出来るようになったのは、ライダーのスタイルだけではなくバイクも変わってきていますか。
宮城:圧倒的にブリヂストンによるタイヤの性能向上によるものです。
昨年、マルケスが14年の最終戦バレンシアで優勝した仕様のままでツインリンクもてぎを走りました。もてぎにはギアもサスペンションも合っていない訳ですが、タイヤに関しては考えられない位グリップしていました。
逆に言えばグランプリライダーが現代のモトGPのバイクのタイヤをあれほどスライドさせて走るというのは驚異的です。
ほとんどのモーターサイクルのタイヤを使った経験がありますし、(クルマの)F1を含めて○○のグリップを経験しましたが、これほど何事も起きず・ピクリともしない。掴みどころがありません。伝える表現が見つからない位です。
通常、グランプリバイクに乗っていない人が、レース経験があるからといってカウンターを当てながらコーナーを抜け、出口でリアをスライドさせられる…そんなところまでは到底行きません。
たまたま、ミスで荷重が抜けて滑ってしまう事はあるでしょうけど、グランプリライダーは全員意図的に向きを変える為にスライドをコントロールしています。
そういう高負荷をタイヤへ与えることついて、窺い知ることのできないグリップの高さです。
高いグリップのタイヤがあり、それを支える高剛性のシャシー、深いバンク角でもハンドリングが破綻しない設計・デザイン、そういった物を徹底的に研究しているのが現代のグランプリバイクです。