BMWとの共同開発がよくいわれるTHP1.6Lターボはこれまで、文句なくフラットトルクですが盛り上がりとレスポンスに欠け、茫洋とした非エキサイティングなエンジンでした。
が、今回は330Nm/1900rpmという扱いやすい低速トルクに加え、6000rpmから上のレッドゾーン手前までグイグイ伸びる、よく出来たNAエンジンのようなメリハリを得ています。
レスポンスも軽やかですし、スポーツ・モードに切り替えると一層、アクセルペダルとの連携が鋭さを増します。スロットル・オフでの落ち込みがそう鋭くない分、公道では扱いやすいです。
でも308GTiのメインはやはり、シャシーでした。
競合相手となるドイツ車勢の1300~1400kg台に対して1205kgという圧倒的な軽さに、高いボディ剛性とプジョー・スポール謹製の足回りが加わって、これ以上の武器はありません。
しかもフロント380mm径ディスクに4ポッドキャリパーというブレーキの効きもタッチも絶品で、踏力だけで微妙にコントロール可能。タイヤサイズとサスの横剛性の高さゆえ、街中の凹凸の大きな路面ではキャビンを揺すられる感覚は多少ありますが、ガタピシ音は皆無です。
逆に峠道などで一定以上の入力なら、308GTiのしなやかな足回りはなぞるように滑らかに、路面のうねりや凹凸に追従します。
いずれにせよステアリングやペダル、シフトレバー、そしてシートといった、触覚を通じて伝わってくる4輪のストローク感や接地、荷重変化といったインフォメーションの質が恐ろしく鮮やかで、こうも解像度の高いMT車が他にあるとすれば、一部のポルシェぐらいでしょう。