THERE IS NO BUSINESS LIKE MOTOR SHOW BUSINESS!
東京モーターショーからショーのステージはロスアンジェルスへ移ります。
1960年代半ばから世界のモーターショーを見てきましたが、演出された興奮、そして意図しないユーモラスな光景に楽しませてもらいました。
■デトロイトにて
まず、圧巻はデトロイトショーのクライスラーの一連のイベントでしょう。1992年、会場コボホール前の階段を駆け上った新型グランド・チェロキーが、ガラスドアを粉砕突進し、舞台に登ったのです。ドライバーはカーガイとして有名なボブ・ラッツ社長(前BMW本社役員、フォード・ヨーロッパ社長、のちにGM副会長)でした。それからの数年、新型ミニバンが弧を飛び、ピックアップが天井から落下し、他のSUVは床をぶち破って出現しました。
クライスラー世紀の結婚といわれたダイムラーとの合併により新ダイムラークライスラーになりました。現ダイムラーCEOのディーター・ツェッチェ博士がCEOになりましたが、クライスラーのショーマンシップを継続しました。謹厳な欧州カージェントルマンと思っていたドクター、アメリカンライフのバーベキュー・シーンでコック帽を冠りサーブしてくれました。
2003年デトロイトショーでは、もうひとつ語り草が生まれました。ダイムラークライスラー No.2のウルフガング・ベルンハルトがダッジ・バイパー・スーパーカーのV10エンジンを搭載したメガバイク・“トマホーク”にまたがり、轟音とともにステージに登りました。最近では、クライスラー・ハリウッド的(実際ハリウッド特殊効果使用)スペクタクルは見られなくなりました。
■ジュネーブにて
軽いユーモアも沢山あります。ある年のジュネーブ・ショーの司会に起用されたのが ASIMO。独特の軽やかな歩調で登場、話しだしました。オヤッ、女性の声です。たしか、ASIMOは中性のはず。
ふと背後を見るとテレビプロンプター画面に、[右ドアからASIMOがステージに登場し、A点で停止する。『ハロー、紳士淑女の皆さん。ホンダのプレスカンファレンスにようこそいらっしゃいました。私の名は ASIMOです・・・・』] ASIMO、読んでる!
これもジューネブのこと。アストン・マーティンが4ドア・“ラパイド”を発表しました。当時の社長ウルリッヒ・ベッツ博士と米ジャーナリスト大物(ほんとうに大きな方です)夫妻が歓談中。奥様の表情、「あなた、よもや乗るつもりじゃないでしょうね。」
ベッツ博士と大物氏、車内に入りました。乗るは易し、降りるは・・・
■ソウルにて
ソウル・モーターショーの欧米ブランド数は東京より多いのです。韓国メーカーは突進型と思われがちですが、どうして。キアの動くコンセプト群は奇想天外でした。私が試乗したのが赤い壺形ボデイ4本足コンセプト。ダイアルで前後左右自在に動き回ります。まさにタコが乗るタコくるま。
操縦機構が見当たらないオープン3輪車は、自律ならぬ他律走行。“他”は奥様で、彼女のリモートコントでご主人を家まで乗せて帰ります。名付けて“酔っ払い亭主”コンセプト。
■そして東京にて
今年の東京ショー、メルセデス・ベンツ発表前、数人の女性と外人オジサンが壁と床を丹念に拭き掃きまわっていました。開幕するとダンシングチームに早変わり。日本人が抱くドイツ完璧主義観を逆手にとった演出でした。
東京の白眉はイチローのユーモアと信念の語り。ベスト・プレゼン賞を上げたくなりました。
(山口京一)