その点、この日のベスト8で川畑選手と戦った今村選手は、その限界をきっちり見きわめられるドライバーでした。
そこが今村選手の強さの理由でもあるのでしょう。マシンの性能的には現時点で川畑選手のGT-Rが上であることを認めたうえで、自分自身はけっしてミスをしない走りに徹したのです。ミスをしないながらもクルマの性能を100%に近いところで出せる走りに。
今村選手が川畑選手相手に活路を見いだせるとしたら、“勝ちきれないけれど、負けもしない”という走りをして、川畑選手のミスを待つことでした。
その狙いは功を奏し、最初の2本では勝負がつかず、再戦に入ります。その2本目に川畑選手のマシンがトラブルを起こしたのです。
今村選手が最初の2本で川畑選手に負けたとしても、川畑選手の車両は次の対戦で壊れていたでしょう。しかし、この今村選手の戦いかたこそが、劣勢のなかでも最大限の成績を残す“勝者のメンタル”のなせる技なのです。
今回は、ちょっと渋いテーマですが、D1における心理戦をクローズアップしてみました。なお大会の優勝者は、決勝で今村選手を下した織戸学選手でした。
※写真提供:サンプロス(撮影:鈴木紳平)
(まめ蔵)