いざ、センターコンソールで赤く点灯しているスイッチを押し、エンジン始動!!
周囲の視線を集める爆音を轟かせて目覚めたエンジンは、新開発の4.0L V型8気筒ツインターボ。
その性能は「GT S」で510ps/650Nm(「GT」は462ps/600Nm)。0-100km/hを3.8秒でこなすほどのポテンシャルを秘めているわけですが、公道ではその片鱗しか味わえません。
とはいっても、1750~4750rpmまでの幅広い回転域で最大トルクを発生させるので交通の流れに合わせるのは朝飯前。また、390mmもの大径カーボンセラミックブレーキも、見通しが悪いコーナーを曲がった先に渋滞が控えていても余裕をもって減速が可能。
だから、流れがスムーズな場面がわずかにでもあれば、パワーと制動力を活かしてスポーティな走りを楽しめてしまえるのです。
そして、気になるのが乗り心地でしょう。
この手のクルマに乗っていると、周囲から「でも、乗り心地は悪いんでしょ」という文句のひとつでも言いたいのがヒシヒシと伝わってきます。
「AMG GT」も例に漏れず……と言いたいところですが、もはや「AMG GT」の乗り心地は良い悪いというレベルで語りつくせないのが正直なところです。
その理由が、走行モード切り替えスイッチ“AMGダイナミックセレクト”であります。
走行モードの切り替えが備わっているクルマは多いですが、「AMG GT」のソレは別格!!
基本はC(Comfort)、S(Sport)、S+(Sport Plus)、RACEの4モード。順にスポーティ度が増していき、エンジンとトランスミッションに加えて、エンジンを支えるマウントにいたるまでチューニングが及びます。
ちなみに、期待を裏切らない?乗り心地の悪さをもたらすのはサーキット向けの最もスパルタンな“RACE”のみ。
エンジンの反応が鋭くなり、クラッチもガツンと繋がるから、グワッと仰け反るようにクルマが前に出る。それにビックリしてアクセルを緩めた途端、今度は後ろから引っ張られるほど強烈なエンジンブレーキが……。
さらに、よりクイックなコーナリングを実現するためにエンジンマウントを硬くして、エンジンをひとつの剛性パーツとするのですが、街乗りだと路面のショックを余すところなく伝えてきます。
一方、一番ゆる~い“C”ではサスペンションとエンジンマウントが柔らかくなり、薄めのクッションのバケットシートにも関わらず、振動や騒音を車内に伝えず、快適なクルージングが可能です。
道や走行状況に応じて、ガラリと味付けを変えられるのは、このような高性能モデルならではの持ち味でしょう。
しかも、この機能の美点は、さらに細かなチューニングが可能な点です。ちなみに、ワタクシが街乗りでベストだと思った味付けは【エンジン特性はスポーツ、足回りは柔らかめ、排気音マシマシ】。アクセルワークによる加減速がナチュラルになり、路面からの不快なショックもなく、スポーティなサウンドが車内に響き渡る絶妙な乗り味です。