「走る楽しさを、誰でも気軽に味わえるようにしたい」というコンセプトのもと開発された「S660」。たしかに、その走りは楽しいのですが、「誰でも気軽に」と言われると……
そう思った、最大の原因が「S660」の運転方法。
搭載するエンジンは660cc直列3気筒ターボ(64ps/104Nm)と昨今の軽自動車の感覚なら出足から軽快なはずですが、「S660」はハッキリ言って出足は鈍い。
ところが、エンジンの回転数が2600rpmを越えたあたりから、一気にクルマが軽くなり、5000rpmくらいまでスポーティなサウンドを奏でつつ速度が増していく。
つまり、マウンテンバイクの運転のように、この軽快感を損なわないようエンジンの回転数をしっかりと意識しながら操らないと「S660」の真髄は感じられないのです。
ただ、このような運転ができるのは、知識と経験に優るベテランドライバーかスポーツカー好きしかいないというのが現状。
「仕事は見て盗め」みたいに「乗れば楽しさが分かる」というようなスタンスでは、免許をとってから1500-2000rpmほどで最大トルクを発揮するクルマに乗り慣れてしまっているボクらの世代に、この手のスポーツカーの面白さは伝わりにくい。
実際、「S660」の購買層の中核は金銭も経験も豊富な方が目立つとのこと。せっかくクルマとして面白いのですから、それが伝わるコンテンツをぜひとも充実させていってほしいと思った次第です。
奇しくも、昨年から今年にかけてスポーツカー市場は国産車を筆頭に過熱しています。これが“復活の狼煙”なのか、はたまた、ローソクが消える前にパッと明るくなる“最後の一閃”なのか。これからも目が離せません。
(今 総一郎)