トヨタ初の女性役員、ジュリー・ハンプ常務役員の麻薬取締法違反逮捕について緊急会見

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──3月に発表したダイバーシティの狙いに変化はありますか? また、昨日の逮捕から本日の記者会見と早い時点で会見を行った背景は?

私の直属の役員も、一般の従業員も子供と考えています。そうすると迷惑をかけたら謝るのも親の責任です。ハンプ氏はかけがえの仲間、どうすれば支えになるのかを考えています。

新体制には緩むことなく続けていきます。性別、国籍全てを排して配置を進めてまいりました。ハンプ氏が日本国籍でない役員が日本に住む初めてのケースするにあたり、いわば、サポートする準備が不足していたのかな、という反省はあります。が、今後も適材適所でもっといいクルマ作りに励むのにいっさい変わりはありません。

──改めて聞きたいが、初の女性役員にハンプ氏を登用した理由は?

人柄。国籍や性別に関係なく、一番は現場を任せられる人。ハンプ氏は10分ミーティングを全員とやっていました。英語がわからない社員とはゆっくりと話していた。企業スポーツの応援では、その横の席に座った他の従業員ともよく話していました。初めて日本に住むことに人一倍努力されていました。部下とのコミュニケーションも、いち早く現れるよう努力し、チーフコミュニケーションオフィサーとして、ニュースリリースなど表現がお客さんにどう表現されるか、アドバイスももらっておりました。チーフコミュニケーションオフィサーと相応しい人物です。

──昨日から今日まで本人から聞いていることはありますか?

捜査に関わることなので、控えさせていただきます。

──今回の薬物が鎮痛剤として必然性があったかは体調などからご存知でしたか? また、処方箋がないのなら違法があると理解していますが、処方箋はあったのでしょうか? 初めての外国の方が日本に暮らす点で反省すべき点があったとは具体的になんですか?

今は捜査に全面的に協力していくことが大事で、捜査中なのでコメントは控えさせていただきます。これまで、真のグローバル企業に向け、日本人以外の役員が日本に住むことはありませんでした。どこに住むんだ、かかりつけの医者はどこにするんだ、食材はどこで買ったらいいかとか、我々が海外に赴任した時にやるようなことを、初めてのことで1日も早く仕事に慣れよう、馴染もうとする時間がない中で、会社のサポートが十分だったのか、改善に結びついていたのか、という思うところです。

──役員登用の中で、プライバシーにも関わりますが、薬物を使用しているかなど身体検査などはやっているのでしょうか? 

赴任に際してのコンプライアンスについては、通常よりやっていますが、個人の体調などは、医療プライバシーに関することなので控えさせてください。

──法を犯していないすると、今後ハンプ氏の役割や立場はどうなるのか、お考えを教えてください。

今は捜査に全面的に協力するべきだと考えます。今後の捜査を通じてハンプ氏に法を犯す意志がなかった、というのが証明されると現在は信じています。

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──ハンプ氏が六本木のホテルで二ヶ月以上暮らしているのはなぜなんでしょうか。また、ハンプ氏のご家族の来日はどうなっているんでしょうか?

私も海外赴任の際は3ヶ月ホテル住まいをいたしました。会社へどこから通うかとか、不動産情報もわからない、予算規模どのくらいなのか、人が住んでるならいつ出るのか、など考えると数ヶ月間ホテル住まいははあり得ると思います。

家族は赴任する準備を進めていたと聞いています。

──ハンプさんが実際に離れている際のサポートはどのように考えているのか、また、販売現場などから影響は出てきているのか、教えてください。

昨日の今日でございますので細かいことは詰めていませんが、今の本部の中でリソースを詰めていきたいです。販売の現場も、従業員も不安に思っていると思う。それで、私がこうして説明することで少しでも情報が伝わればなと思っております。

──今回のことで今後のトヨタの女性社員の登用への影響を教えてください。

国籍や性別に関係なく、適材適所で現場で判断できる人を登用してきています。今後も、現場に近いところの適材適所という方針は変わらずいきたいと思います。

──彼女のポストは、無実が証明されるまで開けておくのでしょうか?

今は、捜査に全面的に協力するのが大切で、そうしていく上で、彼女に法を犯す意志がなかったということが明らかになっていくと思います。

──先程来、ハンプ氏に法を犯す意志がなかったという、そこまで信じられる根拠は何でしょうか?

今の段階ではまだ結論が出ていません。想像の段階で言えない、とご理解いただきたい。

ハンプ氏を登用したのは国籍、性別を超えて、適材適所の人間としてのことです。そして、なにより人柄です。初めての外国人として、この日本に真のグローバル化を目指すのに助けてくれた、手を挙げてくれた、行動で示してくれたのがハンプ氏です。今の段階では協力するが、ハンプ氏が法を犯す意志はなかったと信じています。

──ということは、人柄が信じる根拠と言っていいのでしょうか。

なかなか一言で、人柄ということにはならないと思いますが、人柄も大きなひとつと思います。彼女は常務役員という立場で部下も多く、関係する人々も多くなります。なによりも部下とのコミュニケーションを大切にしていた、日本という異国に来てコミュニケーションを大切にしていた、それから部下思い、家族思いだった、日本のトヨタに馴染む努力をしていた。そして、チーフコミュニケーションオフィサーとして当事者意識が優れていたと思っています。

──トヨタさんから出す指示はありますか? 弁護士や法律相談、情報、手伝い、指示は出しますか? それともハンプさんの100%責任ですか?

会社としてできるサポートはしていきますが、具体的な中身は控えさせていただく。今は全面的に捜査に協力していくことが大事と思います。

──今回のことが外国人を登用したこともひとつの原因になってますが、こういうリスクが高まると思いますか。いままで起こり得る考えられないリスクが起きた時にどのようにマネージしていくかお考えはありますか?

今回のハンプさんの国内常駐に関しては真のグローバル企業に向けた大きな決断だったと思います。さらに海外においても持続的な企業として認められ、お客さんの笑顔を得るためには、適材適所に心ひとつにして、やっていくことが必要だと思います。今回のハンプさんのことがあろうがなかろうが、四月のこの体制に一切影響はないと考えております。

──これまで捜査に全面的に協力するとおっしゃってますが、これまで警察のほうからオフィスに捜査が入ったり、役員に対する質問はありましたか?

それはございません。

また、公式発表は以下の通りです。

ジュリー・ハンプ常務役員の麻薬取締法違反逮捕について

弊社常務役員の件で、世間をお騒がせすることとなり、誠に申し訳なく思っております。現時点で、私どもが把握している事実は限られておりますが、私自身が、皆様の前で、自分の言葉で、ご説明することが大切だと考え、本日、説明の場を設けさせていただきました。

今の私どもにできることは、仲間を信じて、当局の捜査に全面的にご協力することだと思っております。

ジュリー・ハンプ氏は、私にとっても、トヨタにとっても、かけがえのない大切な仲間でございます。今後の捜査を通じて、「ジュリー・ハンプ氏に法を犯す意図がなかった」ということが明らかにされることを信じております。

代表取締役社長 豊田章男

日本を代表する企業が、真に世界で通用するための人材起用に際した大きな衝撃ですが、これを乗り越えてこそ、まさにグローバル企業と言えることができるのではないでしょうか。期待したいと思います。

(clicccar編集長 小林 和久)

 

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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