この非接触電力伝送には大きく分けて3つ方式が知られています。その3つとは、2つの隣接するコイルの片方に電流を流すと発生する磁束を媒介して隣接したもう片方に起電力が発生する電磁誘導を用いた「電磁誘導方式」、電磁界の共鳴現象を利用した「電磁界共鳴方式」、 電力を電磁波に変換しアンテナを介して送受信する技術である「電波方式」です。
いずれの方式も、送電側と受電側の位置ずれに弱く、損失も大きいという問題があり、送電側と受電側の距離もごく僅かな距離しか伝送できないのが現状で、今回、東大が開発したワイヤレスインホイールモータは電磁界共鳴方式を採用しており、伝送距離は10センチ以内となっているようです。
今後の非接触電力伝送技術が目指す方向は、大電力化と長距離化です。その次世代の非接触電力伝送が鉄道の超伝導リニアで開発中で、送電側から受電側へ長距離(10センチ以上)で、かつ高効率で走行中に送電を行う技術が、2027年の超伝導リニア鉄道の営業運転までに実用化される見込みになっています。
これまでの主な実用例は、2008年2月6日に、国土交通省は路面に埋め込んだ給電装置から電磁誘導により非接触で車両側のバッテリーに急速に大電力を充電するハイブリッドバスを羽田空港のターミナル間の無料連絡バスとして運行することを発表しています。
また2010年には昭和飛行機工業が充電スポットに停車するだけでEV(電気自動車)に充電できるワイヤレス給電技術をEVバスで実用化することに成功しました。この場合、電磁誘導方式を採用しており、1周約5キロのコースを走行するのに必要な電力を、充電スポットに約7分停止するだけでまかなえるといいます。
このように今後、いろいろな分野に発展することが期待される非接触電力伝送の技術が、今回の東大が開発したワイヤレスインホイールモータで一層進展することが望まれます。
(山内 博)