トヨタ・MIRAIは「普通のクルマ」とどう違う?

113kW(154ps)、335Nmというスペックは、日産リーフの80kW(109ps)、254Nmを大きく上回りますが、1450kg前後に収まるリーフに対してMIRAIは1850kgと400kg、大人6人分は重いですから圧倒的な差を感じるほどの速さはありません。

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しかし、走行モードを「ECO」から「POWER」にすると思いのほかパンチ力のある速さを得られますから、日本であれば高速道路でも流れをリードするのは容易です。

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MIRAIをアウトバーンなどに持って行くと、もっとパワーを要求されそうですが、日本では心配無用でしょう。

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静粛性に関しては風切り音などは大きな不満はありませんが、注意深く観察するとタイヤのパターンノイズが気になってきます。

乗り心地に関しても、700万円超の価格を考えると正直物足りなく思えます。

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高圧水素タンクなどを積む影響でリヤはトーションビーム式サスペンションを収めるのが「やっと」という事情に加えて、航続距離を伸ばすため、よく転がるエコタイヤを装着している影響もあるでしょう。

これがもう少し高めのタイヤを履いていればMIRAIが目指す上質な走りに貢献してくれそうではあります。

またFCV化の影響はサスペンションだけでなく、前後ともにシートの座面高が高く、とくに後席は「厚底感」があり、前席下につま先がかろうじて入る程度という着座感も、とくに後席はロングドライブだと疲れを誘いそう。

まずは、FCVをいち早く市販化させたことを十分に考慮して評価すべきだと思う一方で、トヨタの開発陣は誰もが「普通に乗れる」という点を目指したのは間違いないはず。

普通に乗れるという点は十分に果たしつつも、かなり好みが分かれそうエクステリアデザインに加えて、上質感を追求したようなインテリアなどと、走りの印象に少し乖離がある印象を受けます。

おそらくEVにも乗ったことのない人がMIRAIのステアリングを握ると感動することは間違いないでしょうが、開発陣はあまりにも力が入りすぎて各要素がチグハグに目立ってしまっている、内・外装や走りからはそんな感じも受けます。

(文/塚田勝弘・写真/小林和久)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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