少し脱線しますが、WRX STIとWRX S4は富士スピードウェイでの試乗会以来、公道でのプレス向け試乗会は行われていませんが、私は後日数日間乗る機会がありましたので、富士スピードウェイの外周路を含めて3回目の試乗になります。
箱根ターンパイクで走り出すと、荒れた路面はもちろん、舗装が良好な路面でも絶えず上下方向を中心とした、大小さまざまな入力を感じますが、ダンピングもよく利いている上にボディの剛性感が高いため、振動の収束を素早く繰り返すという、いかにもスポーツカー的な乗り味。
S4の登場時にオンエアされた CMを思い起こすと、日常とサーキットの非日常が描かれていましたが、明らかに後者に重心が傾いたハンドリング重視のセッティングになっています。
電動パワステはややハードな足まわりからすると、それほど重くないですから、日常ユースでも十分に扱いやすく、さらにステアリングの取付剛性(感)の高さも印象的。
西湘バイパスの悪名高き目地段差のような路面が永遠に続くと、食後の身にはきつく感じますが、得意とするステージの箱根ターンパイクのような山岳路に向かうと、4WDとは思えない回頭性の高さには驚かされます。
いや、これからは4WDこそハンドリングの良さが追求される時代になる、というか、現になっているわけです。
アクティブトルクベクタリングの効果は絶大で、大きな違和感を抱かずに右へ左へと曲がってくれますから、ある程度の速度域になると足まわりのセッティングもストンと腑に落ちる感じ。
4WDはセンターデフによりトルク配分を「前45:後55」に不等配分する「VTD-AWD」で、WRX STIのように「DCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)」は付いていませんが、公道ならS4でも結構楽しめるのではないでしょうか。
箱根ターンパイクのようなステージでは、SIドライブはハンドリング重視の「Sシャープ」モードが最も向いていて、CVTのスポーツリニアトロニックの8速はステップ変速ではなく、レガシィやフォレスターの8速固定式よりもクロスレシオ化されていて、エンジン回転数の落ちが少なくより高回転を保つことができます。
しかし、スバル自慢のリニアトロニックがベルトではなく、チェーンを採用しているといっても、とくに高回転域だと音質やシフトフィールの面でMTやDSGのようなダイレクト感を要求するのはやや酷なのかなとも思えました。
今後のスバルは、数値だけで測れないような感性領域の面にも踏み込んでいくそうなので、 WRX STIはともかく、S4のようにユーザー層の拡大を狙うモデルには、乗り心地とハンドリングの高次元での両立が期待できるかもしれません。
(塚田勝弘)