約1.1mもスライドするアルファード/ヴェルファイアの「助手席スーパーロングスライドシート」の秘密とは?

逆に2列目を助手席ギリギリまで前に出すことで、3列目への乗降性が格段に向上し、空いたスペースにベビーカーなどを積載することも可能。

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世界初のこのスライドシートですが、実現にはいくつかの壁があったことは容易に想像できます。まず、フロアのフラット化。フロアに段差があってはシートレールを助手席から後席まで延ばすことはできません。

ただし、アルファード/ヴェルファイアに限らず、ミニバンに求められるフロアのフラット化は、剛性が確保しにくく、このシートアレンジのためだけではないですが、ドア開口部などの弱い場所や結合部を中心に約200か所のスポット溶接の打ち増し、ホイールハウスのインナーには構造用接着剤をトヨタ車では「MIRAI」に続き採用しています(レクサスをのぞく)。

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実際の操作では、助手席を後ろにスライドさせると、「一度」、前席エリアでストッパーにより止まります。そして再度レバーを引くと、後方の後席エリアに移動できる仕掛けになっています。

このストッパーは、後席に乗員がいたり、足元に荷物があったりした場合の安全のためと、国交省から「前席と後席エリアの区分けをするように」という指針に対応するという2つの理由からだそう。

逆に最後端から助手席を前側にスライドして戻す際は、前なので見えていますからストッパーは利きません。

さらに、助手席は今回の超ロングスライドによりシートベルトがシートに組み込まれています。シート自体で衝撃を受け止めるため、助手席は2列目用を前に持ってきたイメージで、強化されていることになります。

こうした重量増の原因(=燃費悪化)になりそうなシートアレンジを実現できたのもLLクラスミニバンで独走しているアルファード/ヴェルファイアだからこそで、燃費のイメージリーダーであるハイブリッドを擁する点という強みもあるからでしょう。

■新型ヴェルファイア/アルファード発表会で世界初採用の「自動ドア」が開かなかったワケは?
https://clicccar.com/2015/01/26/290459/

■トヨタ新型ヴェルファイア/アルファードは価格319万7782円〜703万6691円
https://clicccar.com/2015/01/26/290353/

(塚田勝弘)

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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