先日お伝えしたとおり、2015年の自動車取得税(約1900億円)廃止に伴う代替財源確保に向けて総務省の「有識者検討会」が「自動車税」や「軽自動車税」の制度見直しを進めています。
総務省は「1.0Lクラスの自動車税が29,500円/年に対して軽自動車税が7,200円/年と極端に低い為、アンバランスを是正する必要が有る」との視点を軸に、エンジンの排気量に応じて課税する現行制度に対して燃費性能などを加味した課税方式への変更案を盛り込んだ正式報告書を10月31日までに纏め上げた模様。
これまで自動車業界は冷え込んでいる国内の新車販売の活性化に向けて、課税根拠を失っている「自動車取得税」と「自動車重量税」の廃止を政府に要求、2015年の消費増税(+5%)時に「自動車取得税」の廃止(-5%)が決定したものの、今度は財源確保で同じ地方税枠の「軽自動車税」の増税案が浮上。
日本自動車工業会は「軽自動車税」が安いのでは無く、そもそも「自動車税」が世界的に見て高過ぎると主張して来ましたが、消費者の税負担軽減に関する提言がいつの間にか、消費増税のドサクサに紛れて更なる増税で相殺されようとしている構図。
「軽自動車税」の増税は好調な軽自動車の国内販売に水をさすことになるだけに、自動車業界に大きな衝撃が走っています。
軽自動車の最大のウリである「税金の安さ」のメリットが目減りすれば「軽離れ」が一気に進むのは明白なだけに自動車業界からは早くも反論が噴出。
スズキの鈴木会長に続き、10月31日にはダイハツ工業の三井社長も「軽自動車の規格枠の中で努力して性能を上げて来たのに、登録車並みの性能になったから軽を増税するとの考えには賛同出来ない」と反論。
消費増税のおり、「軽自動車税」の増税が小型車への移行に繋がる保障も無く、軽自動車と登録車を併せ持つ自動車各社が増税に反対するのも無理はありません。
総務省が「有識者検討会」で纏めた報告書によると、現在、主に排気量で決まっている自動車税や軽自動車税の税額について、車の燃費性能や取得額に応じて購入初年度の税額に対して新たな課税の仕組みを導入することが望ましいとしています。
具体的には「新車購入初年度は購入価格と燃費に応じた税額」に、「購入2年目以降は排気量や燃費を加味した税額」にとの提案。
今回の提案は自動車が地球温暖化を招く二酸化炭素(CO2)の排出量の2割近くを占めていることから、燃費に応じた課税とすることで環境車への乗り換えを促すという論理に基づいていると言います。
一方、環境省が10月28日、消費増税(10%)の際に自動車取得税の廃止に合わせて「エコカー減税」を打ち切った場合、顧客が非エコカーを選択する確立が増えて燃費の悪い車が増えると予想されることから、環境負担増の試算結果を公表。
新聞報道によると、新車販売台数に占めるエコカーのシェアが現在の80%から66%に下がり、増税翌年の2016年時点でCO2排出量が現状よりも年間150トン増、2020年には年間約390万トン増になるとしています。
この為、環境省は取得税廃止後もエコカー普及対策を続けるよう、政府・与党の税制改正論議の中で訴えていく考えとしています。
そうした背景から今回の税制見直しでHVなどのエコカーは減税になるものの、燃費の悪い高級車は増税となる可能性が高い模様。
報告書には「全米自動車政策評議会」、「欧州自動車工業会」からも軽自動車の優遇措置廃止や見直しが求められていることが「ダメ押し」で明記されており、今回の見直しに合わせて現状の倍額以上となる大幅な増税の可能性が高そう。
具体的な税額についてはまだ示されていませんが、総務省は今回の提案書を元に自民・公明両党の税制調査会で議論、年末に纏める「税制改正大綱」に盛り込みたい考えのようです。
自動車業界からの猛反発による調整難航が予想されることから今後の動向は不透明ですが、自動車税の見直しは自動車ユーザーにとって他人事で無いだけに大いに注目されます。
■総務省「自動車関係税制のあり方に関する検討会」資料
http://www.soumu.go.jp/main_content/000257632.pdf
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