歴代ホンダ車の3代目は、デザインやパワーユニット、プラットフォーム等を一新することが多いですよね。
古くは2枚看板だったワンダー・シビックやリトラクタブル・アコード、近年では走りのミニバンこと背低オデッセイや低床ステップワゴン等、革新的なモデルが数多く存在します。
そしてご多分に漏れず、3代目の新型フィットも、最新デザインと新開発メカによるオールブランニューモデルとして登場しました。日本のニーズを基盤にして、世界市場を見据えた開発が行われたのです。
■開発:日本車をライバル視していては、世界で通用しない!
新型フィット開発責任者の小西LPL(ラージプロジェクトリーダー)は、「日本車をライバル視していては世界で通用しない」とバッサリ。燃費のかわりに走りを犠牲にする様な引き算志向を排除して、走りと燃費、質感も「足し算」で積み上げていくという、途方もない目標を掲げました。そしてセンタータンクレイアウトを踏襲して「パッケージングあってのフィット」を基本コンセプトに置き、燃費やユーティリティといった日本の厳しいニーズに応えつつ、世界の強豪達と真っ向勝負できる走りと価格の実現を目指したのです。
■メカニズム:3代目は、技術もメカもオールブランニュー!
新型フィットは、3種類のユニットを新開発。アトキンソンサイクルの1.3Lは、給気側にV-TECとVVTを採用。1.5Lは直噴化で高圧縮比を実現し、パワーと燃費を両立。共にCVTかMTが選べます。更にHVでは、アトキンソン1.5Lと7速DCTにモーターを内蔵した新開発i-DCDシステムによって、宿敵アクアを抜き燃費No.1を達成。新型プラットフォームも、4区画のブロック設計によって派生車種の多様化を織り込むと共に、軽のNシリーズで先行したインナーフレーム骨格の採用によって、軽量&高剛性ボディを実現しました。
■デザイン:「フィット祭り」とは、スタイリングとインテリアのちゃぶ台返し!
ホンダ用語の「祭り」とは、デザイン公募のこと。新型フィットでは、なんと開発終盤にスタイリングとインテリアの両方で実施しました。つまり内外装共にデザインを全てゼロリセット、「ちゃぶ台返し」してしまったのです。どれだけ難産だったかということですが、その甲斐あって、スタイリングはボンネットからAピラーに伸びる立体造形が斬新で、彫刻的なサイドラインも精悍。インテリアではインパネのボリュームを上げて、コンパクトカーらしからぬ質感と本物感を追求した仕上がりとなっています。
そういえばホンダ車の3代目は、あまりに大きく変わるため、最初はちょっこしギョッとするのがお約束。でも「ブランドに込めた意義」と「ハードウエアの斬新さ」の両方が認められれば、大きくブレークする世代でもあります。かつてのワンダーシビックやリトラクタブル・アコードも、日本市場のニーズに応えながら、米国をはじめとする世界市場に大きく羽ばたいていったモデルでした。3代目の新型フィットも、きっと日本だけでなく世界に新たな価値を提供するモデルに成長していくと、強く実感した次第です。
(拓波幸としひろ)