新型マツダアクセラの走りの良さは、アテンザよりむしろ上と感じたワケは?

新型アクセラのデザインを中心に書いた前回の記事に続いて、気になる走りについてお伝えしましょう。

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マツダの走りのポリシーは、走って楽しいこと。走って楽しいとは何なのかと言えば、人間が思った通りにクルマが動いてくれること。

思った通りに動くというのは加速したいだけ加速して、曲がりたいだけ曲がって、減速したいだけ減速することですが、クルマの基本性能が発展途上にあっては、人間が思う理想とする速さ=最高性能の速さであり、それに追いつくだけの技術的進化をしていれば良かった面もあります。アクセルをベタ踏みにしたときに思い切り加速してくれるその加速度が目標、と言った部分ですね。

でも、ご存知の通りそんなゼッタイ性能が求められるシーンや人はかなり少数派となってます。それで、それよりもそこまでにいたる加速感や半分くらい加速したいときの加速度なんかに注目してきたわけです。

じゃあ、半分くらいアクセルを踏んだ時、数値として1/2の加速度を発生させればいいのか?ということになりそうですが、人間の感覚はそうでもなさそうです。そもそも、半分アクセルを踏んだ状態で多くの人は8割くらいまでアクセルを踏んでる、という実験結果も聞いたことがあります。

そこで考えたのが「構え」だそうです。剣道などで「さあやるぞ」というタイミングで取る「構え」です。mazda_axela_112

加速するときは人間は頭が後ろに持っていかれないように首の筋肉を緊張させます。ゆっくり加速する前にはゆっくりと加速するような首の緊張の「構え」、素早く加速する時には素早い「構え」を人間は取るわけです。

その「構え」の時間は、「アクセルを踏み始めてさあ加速するから頭をしっかり支えなきゃ」とする時間であり、期待する加速力の大きさによらず、つまり早く加速したいときもゆっくり加速するときも同じ0.2-0.3秒なんだそうです。

それでアクセラは、踏み込み量や速さに限らず0.3秒で加速を始めるように設定されているそうです。それが「構え」にしっくりくるんだそうです。それが「人間が思った通りにクルマが動く」ひとつの例と言うワケです。

それだけではありません。

構えを取りやすくするのに必要なのは運転中に身体を支えるシートです。

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新型アクセラでは、構えが取りやすいシート作りを心掛けたと言います。

実際に触れてみると、意外なほど表面は柔らかです。かつての「運転にいいシート」の多くが表面が硬めにされていたのと対照的です。

そしてそのシートは座ると座り心地がよく、経験上はスポーツシートとは違って感じました。が、走り出すとしっかり身体を支えてくれるのに気付きます。お尻の部分がズレないし、腰の部分もしっかり支えられ左右に動きません。でも、柔らかめの表面のせいか、乗り心地にもいい影響を与えていると思います。

さらに、少し走り込んでみると、とても素直にクルマが走ってくれる気がしました。

乗ったのは1.5リッターと2リッターのガソリンのみです。2リッターはスポーティな走りにもついてきてくれて、かなりのハイスピード、それもウェットの路面でも驚くほど不安感なく駆け抜けてくれます。思った通りに走る、というのが実現されているのがわかります。

個人的に、1.5リッターはタイヤのグリップ力もエンジンパワーも低いんですが、標準車として考えるととても気持ちよく走れ、好印象を覚えました。最上級車でなくても気持ちよく走れるクルマって、意外と少ないもんです。ステアリングを切り足したり、アクセルをコーナリング中に微調整したりする必要ない感じです。これは2リッターでも共通ですが1.5リッターで「なんとなく走ってても」それができてしまう気がします。

mazda_axela_107コーナーでクルマを曲がらせる時、コーナーの手前でブレーキを踏んでフロントが沈み込んだのと同じくらいでステアリングを切り始めてアクセルを少し踏んでハンドル位置はそのまま、やがてコーナー出口が見えてアクセルを開けながらステアリングを戻していく、ということをやっているわけですが、その一連の動きがスーッとできてしますのです。

そのためのキーとなるのが「ため」だそうです。コーナリングし始める前の部分にサスが沈み込む「ため」の部分を作ってやって自然にコーナリングへとつながっていくんだそうです。

従来モデルに比べるとこの「ため」が短く、人間が期待するよりも早く曲がってしまい、エキサイティングに感じる事はあっても自然でなかったそうで、新型アクセラは操舵に応じた感覚で曲がっていくところをねらっているんだそうです。

これはCX-5やアテンザも同じ狙い所だそうですが、個人的感覚ではそれらよりむしろゆっくりとコーナリングが始まる(ヨーが立ち上がる)ように感じたんですが、実際にはむしろ早く曲がり始めている(ヨーのゲインが高い)そうです。「ため」が効いてゆっくりに感じたけど実際には遅くないということです。チーフエンジニアの猿渡さんからは「まさにそこを狙ったんです」と言われました。まんまと気持ちよくノセラレたわけですね。

mazda_axela_125ドイツ車やフランス車、イタリア車とも違う、けれども味がないと言われる従来の日本車とも違う「無未無臭じゃないけど洗練された味」に感じたと思います。

「構え」「ため」といった概念や「魂動」といったデザインコンセプトで日本車の新しい味を作ってくれるマツダ。CX-5でもアテンザでもアクセラでもなく、早く日本語をベースにした車名になってくれれば完璧!と思いました。

(小林和久)

この記事の著者

編集長 小林和久 近影

編集長 小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務める。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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