甘口、辛口、そしてワル口…ホンネの新車試乗記は?

〈MondayTalk星島浩/自伝的爺ぃの独り言33〉  試乗記にもいろいろあるが思ったことを書くべきか、例えばオーリスとフォレスター

 

 

 近ごろは、新型車が発売されるや、即、ウェブサイトに試乗記がアップされ、当モーターファン別冊「すべてシリーズ」に続いて、次々自動車専門誌が採り上げる。

 

 全部に目を通すのは無理としても、そこは隠居同然の身。結構、多くの記述を拝読させてもらっている。

 

 おおかた評価は甘口だ。口当たりが良く、読後感もさわやか。加えて甘口評価なさる方ほど、雑誌にしろウェブサイトにしろ掲載件数が多いから、読者諸氏にも高く支持されているのだろう。

 

       

 私も30歳代までは「大甘口」だった。

 メーカーや販売関係者に喜んでもらおうとか、読者諸氏に支持されたいといった意識が働いたわけではない。

 

 三栄書房をクビになって「平凡パンチ」誌カーデスクに就いた1960年代半ばは、等しく「クルマが憧れ」の存在で、日産がサニーを、トヨタがカローラを発売したのがマイカー元年と謂われた1966年である。

 若者をターゲットにしたスポーティモデルが輩出したのも60年代後半から70年代初頭に集中している。

 

    いわばモータリゼーション急成長期であり、私自身がクルマに憧れているのだから、ワル口はおろか、辛口さえ皆無。まるで新しい恋人に出逢った気持ちだもの、まさしく「アバタもエクボ」。たまにライバルメーカー関係者がケチ付けようものなら、本気で憤慨した。

 

  それでも、トヨタ自販の宣伝担当重役が抗議のため「平凡パンチ」編集部に乗り込んで来て、次号からの広告出稿差し止めを告げられた記憶がある—-官報に掲載された新型車認証記録を基に書いた予測文面が、在庫販売に響くとの抗議だったらしい。今は少なくとも1ヶ月前に新型車発売を予告しなければならないと決まっているのだが。

 

 直ちに編集局長兼副社長に喚ばれ、 記事が間違っていないと証言したら「良し」と一言。 以後、数ヶ月、トヨタの広告出稿停止に甘んじたっけ—-出稿待ちがあるほどスポンサーが多い雑誌ならではの強気だったろうが、業界紙と違う、一般誌の権威を知って誇らしかった。

 

  クルマの評価に「辛口」」が受けるようになったのは、尊敬すべき 同僚=三本和彦(みつもと・かずひこ)さんがテレビ神奈川で「新車情報」を主宰するようになった後だ。彼我ともに40歳を過ぎていたが、以来30年間続いた長寿番組で、私も年数回ゲスト出演させてもらっている。

 

 開発主査が新車を紹介し、三本さんが試乗してきた印象を語る。購入したユーザーの立場に徹しているので、遠慮なく評価し、疑問点を主査にぶつける。

 ときに「注文」があり、もっと突っ込んで欲しいと感じたこともあるが、三本さんの語り口には、開発時点の裏話なんか知る由もないユーザーの立場ならではの優しさが滲み出ていた。

 

 確かに「辛口」ではある。が、「新車情報」の番組スポンサーが自動車メーカーではない点が強みで、気兼ねや遠慮は要らなかった。

 

 同じ意味で、今はクルマを採り上げる情報サイトの多くも自動車メーカーやディーラーの広告出稿に依存していないのだし、モータリゼーションだって成長期が成熟期になったのだもの。ときとして「甘口」に空虚感を覚えること、なきにしもあらず。ましてメーカーやディーラーがカネを出して作らせたと分かる雑誌は空虚感を超え、吐き気さえ覚える。

 

 もっと、感じたこと、こうあってほしいと思ったことを遠慮なく主張したほうが良ろしいのではないか、と。成長期ではない、誰もが飛びつきたくなるほどクルマが「憧れの存在」ではなくなったのであれば、甘口に終始する遠慮は要らないだろう。アバタはアバタと書けばよろしい。

 

 例えば、最近、目にした記述で頗る好評だったオーリスとフォレスター。

 

 特に私がオーリスで気になったのはアクアライン走行中の車内で会話がやや濁って聞こえたこと。一般路や高速道での車内騒音レベルは高くない。カローラ・ハッチバックだと位置づければ、むしろ静粛性に優れた部類であるだけに、トンネル内での会話に些か違和感を覚えた。

                        

    オーリスはちょっと、走行時の会話の不明瞭さが気になった。

 

 

 それが、ひょっとして、これまでボンネットフード裏側に貼ってあった防音・防振材の省略に起因しているのではないか? 商用車・トラック類はともかく、乗用車では極めて稀だ。軽量化とコストダウン目的だろうが、その分、値下げや低燃費の恩恵のほうが大きかったのかしら。

 

 フォレスターについても_??? が少なくなかった。

 SUVとしては良くできている。Xモードに代表される機能魅力もある。

 

 が、アウトバックがレガシィ級ならフォレスターはインプレッサ級だ。 

 アウトバックを引っ込めてフォレスターを輸出の主力にするのかしら。

 

 国内で全幅1800㎜は大きすぎないか? これが第一感。

 すでにベースのインプレッサ自体が小型車規格を大きく超えているのだから驚くには当たらないし、ボクサーエンジンはタイヤサイズが大きくなると前輪操舵角が制限される悩みもあり、全幅を拡げたくなろうが—-。

 

 もう一つはガソリンエンジンだけだったこと。なぜ出来上がっているはずのハイブリッドを戦列に加えなかったのか。

   

    

   事情は分かるが、やっぱりディーゼルは欲しかったなぁ 

 

 

 さらに言うなら、ディーゼル搭載だ。欧州で売っているじゃないの。

 無い物ねだりではない。現時点で水平対向クリーンディーゼルを国内発売したら、それこそ「憧れ」の対象。飛びついて買う人が殺到したろう。

 

 むろん欧州で売っているでぃるディーゼルはユーロ5レベル。日本ではポスト新長期規制に適合しなければならないし、欧州向けだって今秋にはユーロ6に改めねばなるまい。現在鋭意開発中—-ではなく、何を置いても規制適合エンジンを先行開発して、国内に投入してほしかった。

 

 スバルのボクサーディーゼルが爆発人気を得たら、パジェロやCX-5は困ったかもしれない。デリカD5にも影響したろう。まさかトヨタがブレーキをかけたわけではあるまい。スバルの経営陣は決断時機を逸したョ。

 

 なんて書くと、やっぱり三本和彦=「辛口」。星島 浩=「ワル口」と評される所以かなァ—-今回も長文になってゴメン。★