安価なシェール・ガスを2017年に米国から輸入開始!日本でもCNG(天然ガス)車が普及か?

以前に「地底に眠るシェールオイルで米国が世界最大の産油国に!」でお伝えしましたが、昨年11月、IEA(国際エネルギー機関)が世界のエネルギー需給の見通しに関する報告書で米国が「シェール革命」により、今後5年以内に世界最大の産油国になると発表。 

中東の原油生産量を抜いて世界最大の産油国になるだけで無く、2035年までに国土全体のエネルギー需要をすべて自給できるようになるとしています。 

シェール層岩盤 (出展 IEA 国際エネルギー機関)

ちなみに古代の動植物の死骸から発生したガスや液体が泥と共に堆積して出来た頁岩(けつがん)の層から採掘したガスを「シェール・ガス」、採取したオイルシェールを粉砕&乾留することで得られる油を「シェール・オイル」と呼びます。 

従来、地下2~3km付近の固い岩盤層に封じ込められている「シェール・ガス」や「シェール・オイル」の採取は不可能とされていましたが、それを可能にした技術革新が以下の3つ。 

 1)「縦堀り」後の「水平掘り」
 2)地層に割れ目を作る「水圧破砕(フラッキング)」
 3)マイクロサイズミック振動波による破砕状況観測 

採掘の際に500~1000気圧の高圧水と砂を地中に注入して岩盤を破砕する訳ですが、当初は、ガスが閉じ込められた頁岩層に水を押し込むポンプの力が弱く、水の粘性を高める化学薬品を使用していた為に環境汚染が発生。 

現在ではポンプの出力向上によりその必要性が減り、破砕用の水についても再利用するなど、環境負荷対策がなされていると言います。 

出展 三菱商事

「シェールガス」は天然ガスと成分に差は無く、大きな違いはそれが存在する場所。 

「天然ガス」は熱や圧力を受けて堆積岩(根源岩)から数千万年単位の時間をかけて滲み出し、「貯留岩層」にゆっくり移動、ガスを通さない「帽岩」の下に溜まった物を指します。 

米国に於けるシェールガスの埋蔵量は莫大で、在来型天然ガスと合わせると、ロシアと世界一の埋蔵量を争う水準に達すると見られています。 

出展 三菱商事

一方、天然ガスの大量消費地である欧州では長引く金融危機・景気後退によるガス需要減で取引価格が低下しており、ロシアなどのガス輸出大国は過剰在庫を抱えているとか。

日本に良い値段で売りたくて仕方が無いのが本音。 

当の日本は原子力発電の代替エネルギーとして火力発電用の天然ガス輸入を既に増やしている状況ですが、安定供給を条件に既存ガス産出国と長期契約を結んでいることや、ガス価格が原油価格と連動している等のしがらみから、米国市場に比べて3~5倍の割高な価格で天然ガスを買っており、これが電気料金の値上げの大きな理由になっています。 

出展 BP (British Petroleum)

成分が在来型天然ガスとほぼ同じなので、さっさとシェールガスに切り替えてしまえば良いようなものですが、長期契約期間途上での解約に伴うペナルティの発生や、タンカーで輸送する際に一旦 液化天然ガスに変換する為の新たな設備投資が発生するといった面倒な課題も。

そうした中、5月17日に米エネルギー省がシェール・ガスの対日輸出を許可。2017年からシェール・ガスが日本に入って来ることが確定したようです。 

日本は現在、中東などから天然ガスを大量に購入しており、ロシアやカナダ、オーストラリアからの天然ガス輸入の話も持ち上がっています。 

HONDA CIVIC CNG仕様

資源に乏しい日本にとって、再生可能エネルギーが本格普及するまでの間、原発に代わるエネルギーとして天然ガス調達先の複数化は大変重要。 

シェール・ガスの出現で今後天然ガスの輸入価格が安くなれば、燃焼時にNOxなどの有害物質発生が非常に少ない「CNG(圧縮天然ガス)」車が見直される可能性も出てきます。
ホンダは既に米国で「CIVIC」のCNG仕様車を約250万円で販売中。

HONDA CITY CNG仕様

おりしも炭素繊維で強化した高圧燃料タンクもFCV(燃料電池車)で開発済み。 

以上のことから、EVも含め、環境に優しい自動車用エネルギー源の多様化が今後いっそう進みそうな状況になって来ました。 

■HONDA CIVIC CNG仕様 Webサイト
  http://automobiles.honda.com/civic-natural-gas/

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 (Avanti Yasunori) 

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この記事の著者

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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