VWが開発したトランスミッションDSG(Direct Shift Gearbox)が2013年3月に中国で38万台を超えるリコールとなり、大きな波紋を呼びました。
これは中国の国営TV「中国中央電視台(CCTV)」が3月15日の「消費者権利デー」に合わせて放映した特別番組「3・15晩会」の中で、VWのトランスミッションが走行中に加速もしくは減速を引き起こすと指摘したことが発端。
「3・15晩会」は中国で消費者の力が増していることを示す毎年恒例の番組となっており、「VWが品質不良の自動変速機を搭載した自動車を販売し、不特定多数の消費者を対象に意図しない加速問題や自動車事故を引き起こしている」と非難。
この指摘を受けてVWは「問題のある変速機の修理を計画しており、当社は今後の改良に努力を惜しまない」と不具合を認め、3月20日に中国市場で7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)「DSG」のリコールを発表。
VWグループは第一汽車集団、及び上海汽車との合弁で中国で自動車を生産しており、向こう5年間で中国における年産能力を約2倍の400万台に拡大を目指すなど、GMと並んで中国市場で大きなシェアを占めているだけに最優先で対応したとの見方も。
そしてVWは中国に続き2013年5月8日に日本で10万台を超えるリコールを発表。
中国のリコールでは不具合の対象が「現地生産車」とされていましたが、今回日本でもリコールが発表されたことから、元々「DSG」の基本設計自体に問題があったものと推測。
日本に於けるリコールでは同ミッションを積むAudi A1やA3も対象(計1.4万台)に含まれており、国土交通省の発表によると市場からの不具合指摘件数は既にVW車が338件、Audi車が55件に達しています。
VWは不具合の原因について、高温で湿った天候や極度の交通渋滞、アジアの一部都市で多く見られるような公害が原因と説明しています。
日本でも既に少数とは言えない指摘件数に上っていることや、追突などの加害・被害事故の危険性を伴う不具合だけに、VWの対応スピードに問題が有る可能性も否定できません。
今回の日本での不具合発見動機は「市場技術情報」だけで無く、「国土交通省の指摘」も併記されていることからもその辺りの事情が垣間見えます。
VWは今回のリコール対象ユーザーへのアナウンスにあたり、全車両、対策品の「DSG制御コンピュータ」に交換すると共に、パーツの準備等に時間を要するとして、当面ユーザーへの注意喚起を行い、準備が整い次第、再度入庫の通知をするとしています。
国産車でもこうした同様のリコール遅れは最近でも散発しており、安全面への取組み姿勢が問われることになり、信頼を損なわない為にもメーカーの迅速な対応が望まれます。
【VW・Audi DSG リコール情報】
7速DSG型自動変速機を搭載した車両において、自動変速機制御コンピュータの基盤材質が不適切であるため、内部ショートが発生し電源用ヒューズが溶断する恐れがある。走行中に不具合が発生した場合、クラッチの締結が開放されることによって、車両の運行を維持する為の駆動力が伝達されず、惰性走行状態となり、車両停車後に再発進不能となる。尚、不具合が発生しても、車両を安全に停車させるための制動、操舵にかかわる機能は保持される。駐車中に不具合が発生した場合、エンジンを始動できない、または始動できても発進不能となる。【対象車】 総台数 104,767台
・VW 輸入期間 平成19年10月22日~平成24 年10月15日(計91,015台)
ゴルフ、ポロ、ジェッタ、パサート、シロッコ、トゥーラン等計19型式、計24車種・Audi 輸入期間 平成20年8月20日 ~ 平成23年11月16日(計13,752台)
A3、A1 計4型式 計3車種
■国土交通省 リコール情報サイト
VW http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha08_hh_001314.html
Audi http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha08_hh_001315.html
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