電子制御技術の進化で「ECU」のブラックボックス化が加速 !

日産が4月4日、低速走行中(エンジン低回転時)にエアコンのコンプレッサが故障した場合、エンストする恐れがあるとして、国土交通省にSUV「デュアリス」のリコールを届け出ました。

日産 デュアリス

これはエンジン・コントロール・ユニット(ECU)の制御プログラムが不適切で、エンジン回転数が急激に低下した場合にエンストを回避する復帰制御が追いつかないという不具合。

日産 デュアリス 日産 デュアリス

ちなみにリコール対象車両は2007年4月24日~2010年3月19日製造分の車両で、計51,069台に上る模様。市場からの情報では195件発生していると言います。 

振り返れば1970年代後半~1980年代の「ECU」はその名のとおり、正にエンジンをコントロールするコンピュータでした。 

ガソリンエンジン制御システム (出展 自動車技術会)
ガソリンエンジン制御システム (出展 自動車技術会)

 ECUは人間で言えば「頭脳」で、「神経」に相当する様々なセンサーから情報を得ています。 

・吸気温度を調べる吸気温センサー
・冷却水の温度を調べる水温センサー
・アクセルペダルの踏み込み量を調べるスロットルポジションセンサー
・ノッキング音を検知するノックセンサー
・ピストンの位置を調べるクランクポジションセンサー
・カムシャフトの回転角位置を調べるカムポジションセンサー
・排気ガス中の酸素濃度を調べるO2センサー

そうした各種センサーからの情報を元に最適な燃料噴射量を演算、エンジンを常にベストな状態とすべく各機構をコントロールしています。 

・始動制御   セルモーター、イモビライザー
・点火機構   点火時期
・燃料系統   燃料噴射タイミング、噴射量、アイドル回転数、フューエルポンプ
・過給器    過給圧
・排気デバイス 排ガス還元量
・動弁機構    バルブタイミング、バルブリフト量

そして1980年代後半に入ると、ECUはATやエアコン、発電機などの補機類、さらには可変ダンパーなど、エンジンだけで無く、走行性能に関わる機能までも制御するようになり、そうしたことからECUはいつしか「エンジン・コントロール・ユニット」から「エレクトリック・コントロール・ユニット」の略としても使われるようになりました。

高級車では50個程度のECUが使われているケースもざらで、ECU数がどんどん増えるに従って、ECU同士を相互連携させながら動作させる「協調制御」へと進化して行きます。

 日産 デュアリス

例えば「ノーマル」 「エコ」 「スポーツ」等、ボタン一つでエンジン、AT、エアコンなどの特性をシチュエーションに合わせて選択出きるようになっているのも「協調制御」のお陰という訳です。 

こうしたECUの高度化に伴って制御プログラムもいっそう複雑化しており、近年ではECUがある意味、ブラックボックス化。開発時には発見できなかったプログラムの「バグ」が市場で問題化するケースも散見されるようになりました。 

今回の「デュアリス」のリコールもエアコンのコンプレッサ故障とエンジン制御プログラムのバグが重なることで発生する不具合。 

日産 デュアリス

HVやEVなどで電動化が進む現在、ドライビング・アシスト機能も増えて運転が快適になる一方で、走行時の安全に関わるような不具合が発生しては本末転倒となるだけに、「ECU」の開発では実車による様々な「意地悪検証」に加え、十分な開発日程の確保が重要となることは言うまでもありません。 

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日産デュアリス リコール届出について(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha08_hh_001280.html 

 (Avanti Yasunori) 

【写真ギャラリーをご覧になりたい方はこちら】 https://clicccar.com/?p=217911

この記事の著者

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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