マツダ・アテンザ試乗レポート【3】よりの続き
正直な話をしよう。
買か買いじゃないかと聞かれれば「買い」だ。ただし、ディーゼルエンジンのようなインパクトはない。一つには、ガソリンエンジンは研究されつくされ熟成が進んでいるので、パワーや燃費など結果としてのパフォーマンスという点でインパクトが大きく感じられないからだ。
ガソリンエンジン「スカイアクティブ‐G」に込められた技術はとても興味深い。じつはレギュラーガソリンのオクタン価が欧州並みの95オクタンならば、圧縮比はディーゼルと同じ14対1にできるのだという(デミオではレギュラーガソリンで14対1を達成している)。
マツダのスカイアクティブ‐Gつまりガソリンエンジンはミラーサイクルが導入されている。
ミラーサイクルは吸気バルブが閉じるタイミングを遅らせることでシリンダー容積よりも少ない空気量しか吸い込まず、爆発行程では容積一杯まで膨張させる。じつはこのほうが燃料の持つ爆発エネルギーを無駄なく取り出せるのだという。ただし、一般的な圧縮比でミラーサイクル=バルブの遅閉じをやると熱効率がものすごく悪くなるのだという。そのため従来のミラーサイクルエンジンは過給機…主にスーパーチャージャーとの組み合わせるのが一般的なやり方だった。
自然吸気エンジンでミラーサイクルを成立させるためには高圧縮比が必須なのだ。もちろん低負荷域では実際の圧縮比は13対1よりも低くなっているが、マツダのスカイアクティブ‐Gは、可変バルブタイミングを組み合わせることでエンジンの負荷や燃焼状態に応じてバルブが閉じるタイミングをコントロールより効率のいい実圧縮比を実現できているのだという。
実際に2Lに試乗した印象では、思いのほか低回転域のトルクがあり走りやすかった。
感動するほど強力な加速感はなかったが、考えてみれば、およそ1.5tの車重に大人3人乗りで何のストレスもなく山道を(ハイペースで)走れたのだ。しかもアクセル操作に対するエンジンの応答がとてもリニア=素直なので、微妙な速度調整や加減速のコントロールができ、右足とエンジンがダイレクトにつながっているような快感があった。
十分な性能であり魅力あるエンジンだといえる。
(斎藤聡)