驚きの「圧縮比を下げたディーゼル」がもたらしたものとは?【マツダ・アテンザ試乗レポート3】

マツダ・アテンザ試乗レポート【2】よりの続き

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興味深いのは、この優れた排ガス性能を可能にするためのアプローチだ。
一般的にディーゼルエンジンの圧縮比は18対1~22対1くらいの高圧縮比になっている。ところがマツダのディーゼルは圧縮比が14対1しかない。

では、なぜ今まで圧縮比の低いディーゼルエンジンがなかったのか。
ガソリンでもディーゼルでも、圧縮比を高めると熱効率は上がるとされているのが一般的で、ガソリンの場合はノッキング限界がその上限を決めたようなもの。ディーゼルエンジンはノッキングがないから圧縮比はガソリンに比べて高くなっていた。圧縮比を低めるメリットが実証されなかった上、ディーゼルサイクルの機構上は圧縮による自然着火によって燃料を燃やしているが、圧縮比が低いとこれが難しいから。
なのでこれまで圧縮比を低くしようとするエンジニアは出てこなかったのだが、スカイアクティブの開発責任者である執行役員パワートレイン開発本部長の人見光夫氏は、こう考えたのだという。

「もし圧縮比が低くできるなら、シリンダーブロックやコンロッドの強度は格段に低くできるのでエンジン自体が軽くなるし、スムーズに回るようになる。もう一つ。圧縮比が高いと上死点前着火が起こりやすくなるので、わざと燃料を噴くタイミングを遅らせ上死点後着火にしていた。ところが上死点後着火にすると、エンジンの効率は途端に悪くなる。ピストンが一番上にくる上死点で爆発させてやれば、クランクに効率よく爆発エネルギーを伝えてやれるのでエネルギーを有効に取り出せるし、燃焼時間を長く取れるので燃料もきれいに燃やしてやることができる。つまりクリーンなエンジンが作れるのだ。ならば従来の圧縮比で排ガスをクリーンにする研究をするより、低圧縮比で着火させる研究をする価値がある。」
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果たして、低圧縮ディーゼルの開発に成功。ターボエンジンを組み合わせることによって最大トルク42.8kgm/2000rpmを達成したのだ。
燃費もJC08モードでATが20.0km/L(XD/XD L Package)、6速MTでは22・4km/Ⅼ(セダンXD)を実現している。
実際そのスムーズにレブリミットまで吹き上がっていく吹き上がりの心地よさは従来のディーゼルとは比べものにならない。

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もし試乗できるチャンスがあるなら、ぜひマニュアルトランスミッションを試してほしい。2速でも楽々発進できる分厚い低回転域のトルク、スムーズで伸びのある加速感、抜群に広い3速の守備範囲など、エンジンの魅力がよりくっきりと浮かび上がってくる。また低中回転域のとるが豊かなのでMTとのマッチングがよMTの面白さも実感できるのではないかと思う。

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 マツダ・アテンザ試乗レポート【4】に続く

(斎藤聡)