レース界の「モンスター」が現代版「方舟(はこぶね)」を開発!

2011年3月11日に発生した東日本大震災ではマグニチュード 9規模の地震により、10mを超す巨大津波が発生、18,000人以上もの人達が尊い命を奪われました。

今後も静岡県の駿河湾から九州東方沖まで続く深さ約4kmの海底トラフを震源とする「南海トラフ地震」の発生が懸念されており、20m以上の津波や火災、家屋倒壊などで32万人以上の死者が出ると予想されています。 

浮揚式津波対策用シェルター
浮揚式津波対策用シェルター

利便性の良さから沿岸地域には多くの工場や漁業を営む人達が暮らしており、地域自治体も大地震発生直後に襲来する津波からの避難方法などで頭を悩ませています。

そのような状況の中、2013年4月4日に田嶋社長率いる(株)タジマモーターコーポレーションが津波発生時に高台へ素早く避難出来ない高齢者などにも優しい平成版の方舟(はこぶね)を開発したと発表しました。自治体や企業等での需要を見込んでいるそうです。 

浮揚式津波対策用シェルター
浮揚式津波対策用シェルター

「モンスター」の異名を持つ田嶋伸博氏(62)と言えば、現在も第一線で活躍するレーシングドライバーとしてお馴染み。

会長兼社長業のかたわら、モータースポーツに精を出す田嶋氏ですが、米国コロラド州で開催される「パイクスピーク国際ヒルクライム」では6連覇を達成、2012年にもオリジナルのEVレーシングカーで同レースに挑戦するなど活躍中。

そんなモンスター田嶋氏が開発した「浮揚式津波対策用シェルター SAFE+(セーフプラス)」はサイズが全長6.16m × 全幅2.33m × 全高2.3mで20人を収容可能。2012年10月に開発をスタート、2013年3月末に試作品第1号が完成。

シェルターにはレーシングカーや小型船舶用の軽量FRPを使用しており、扉は潜水艦等に使われる水密ドアを採用。シェルター内は約7.5畳の広さで、衝撃と浸水に強い強固な設計になっている模様。また平常時は、備蓄倉庫や集会場としてカラオケを楽しむことも可能と言います。 

<主な特徴>

・津波に襲われた際、水面に浮遊
・転覆してもすぐに元に戻る優れた復元性
・バッテリー搭載で内部照明可能
・平底のため設置が容易で安定性良好
・床下に独立気泡の浮体を設置、船底に穴があいても沈まない「不沈構造」
・安全確保の為、20名分のフルハーネス4点シートベルト装備
・日常生活の場でも違和感や威圧感のない外観デザイン
・浮いた状態でドアを開閉でき、救助活動が可能
・ドア位置が低く、歩行困難者や車イスでも素早く乗降可能
 (オプションのスロープを使用し、車イスごと乗り込み可能)
・車1台分の駐車スペースがあれば、あらゆる場所に設置可能
・4トン車での運搬を想定したサイズ・設計 

田嶋社長はシェルターの普及により、人々が安心・安全な生活を送れることを第一に、早期普及を実現するビジネスモデルを策定しており、一社での単独展開では必要数を短期間に揃えることが困難な為、今後は「量産を得意とする企業と連携して全国に発信していきたい」と広く製造協力企業を募集中。

「製造ノウハウや情報を共有し、高品質な製品を安定して製造する」をモットーに、ニーズの高い地域で製造販売を行ない、全国各地の産業創出に貢献するとしています。

既に静岡県庁の庁舎前で川勝平太県知事や関係者に実物をプレゼンテーションするなど、広報活動を進めているようで、2013年:100台、2014年:1,000台、2015年:2,000台の製造を見込んでいる模様。

浮揚式津波対策用シェルター
浮揚式津波対策用シェルター

今回の試作機は多人数用ですが、家族用などの自宅敷地内に置ける小型モデルの登場も期待したところ。津波に飲み込まれた際の転覆にも配慮した設計なので、イザという時にはここへ逃げ込めば助かる可能性は大幅に高まりそう。

なにせ、転覆が日常茶飯事のラリー車製造を長年手掛けてきた田嶋氏だけに強度や安全性へのノウハウも豊富。

しかも今回発表された20名乗りシェルターで価格が350万円前後とリーズナブルな設定なので、これなら自治体や企業での導入が期待できそうです。

このシェルターの量産で協力企業が多く名乗りを上げれば沿岸地域の住民にとって、もしもの震災発生時も「備え有れば憂い無し」となりそうです。 

■浮揚式津波対策用シェルター SAFE+(セーフプラス)
http://www.tajima-motor.com/news/13/130404_safe/index.html 

■タジマモーターコーポレーション Webサイト
http://www.tajima-motor.com/index.html

Avanti Yasunori) 

【写真ギャラリーをご覧になりたい方はこちら】 https://clicccar.com/?p=217405

この記事の著者

Avanti Yasunori 近影

Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
続きを見る
閉じる