ドラマ「メイドイン・ジャパン」に見る日本のモノ作りの歪みとは ?

NHKが放送60周年を記念して1月26日から全3編で放映中のTVドラマ「メイドイン・ジャパン」が話題になっています。 

日本を代表する巨大電機メーカーの経営が悪化し倒産の危機に陥った中で、秘密裏に選抜・編成された異端な社員7人で構成する「再建戦略室」チームが、会社再建に向けて「リチウムイオン電池市場」で勝負をかけるという時流に乗ったストーリー。

TVドラマ 「メイドイン・ジャパン」 (出展 NHK) 

この物語は電機メーカーが舞台になってはいますが、そのストーリーの素材は1997年~1999年当時、倒産の危機に陥った大手自動車メーカーで再建に携わった人物への取材などをベースにしていると言うだけに、架空の物語ながら、リアルな内容になっています。 

ドラマでは「メイドイン・ジャパン」製品そのものと言うよりも、それを生み出す企業風土など、表からは見えない部分にメスを入れています。

主人公(唐沢寿明)は熱血漢で「再建戦略室」を牽引するリーダー。第1回放送では中国企業が同社の技術をコピーした製品を売り出した事で、取引先の自動車メーカーとの契約が奪われるところからスタート。技術料を請求する為、相手中国企業に乗り込んでみると、そこにはかつての同僚技術者の姿が…。

同僚は当時「リチウムイオン電池技術」開発の重要性を社内で説くも予算が無いと相手にされず、遂には会社を追い出され、その後中国企業に拾われて頭の中に秘めていた技術を中国で製品化していたという流れ。

TVドラマ 「メイドイン・ジャパン」 (出展 NHK)

ドラマのストーリーでは均一性を重視する日本特有の企業風土にスポットを当てており、異質な人材を職場から排除、上司・役員は自身の保身に熱心で、若い優秀な技術者の芽を結局摘んでしまっている実態を炙り出します。

確かに日本の自動車業界を振り返れば、組織内上下間の疎通の悪さが災いして不具合などの隠蔽体質が取り沙汰されたケースも見られ、こうしたことが優れた日本製品を生み出す力を阻害する要因になっているのかもしれません。 

ちなみにドラマの素材となった自動車メーカーは外資を受け入れた後、社内を大改革、近年ではコンパクトカーの開発リーダーに他の大手自動車メーカーを退職、数年後同社に再就職した有能な女性社員を起用するなど、社内の優秀な人材を発掘、重要なポジションに積極登用するような社風に大きく転換しているようです。

企業の財産はあくまで「人」だけに、こうした組織内の上下関係に「メイドイン・ジャパン」の発展を阻害する歪みが有ると指摘するこのドラマ、あながち他人事では無さそうです。 

■NHK総合 「メイドイン・ジャパン」Webサイト
http://www.nhk.or.jp/drama/madeinjapan/index.html 

[今後の放映予定]
 毎週土曜日放映(NHK総合) 
  第1回再放送 2013年 2月2日 16:00~17:13
  第2回放送   2013年 2月2日 21:00~22:13
  第3回放送   2013年 2月9日 21:00~22:13

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 (Avanti Yasunori

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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