新型クラウンの開発でトヨタが取り組んだデザイン改革とは ?

2012年12月25日に発売された新型「クラウン」では従来のデザインプロセスに対して新たな手法がとられたようです。

トヨタでは生産性を重視するあまり、デザイン部門や設計/開発部門よりも生産技術部門の現場の方が権限が強いというのは有名な話で、デザイナーや設計者の意図が必ずしもそのまま製品に反映される訳ではないという側面が強かった模様。

今回のクラウンの開発ではその部分にメスを入れたと言います。

欧州車のみならず、昨今の韓国車デザインの著しいレベルアップに対して危機感を抱いていた豊田章男社長は自身による新体制になって以降、トヨタ・デザインの変革に注力。 

14代目クラウンではコンパクトカーやミニバンなどへ流れたユーザー層の取り込みに向けてエクステリアのデザインを若返らせ、気品の中にも迫力を併せ持った意匠となっています。 

トヨタ クラウン ロイヤル

新聞報道などによると、「安定性」を感じさせる車両外観を実現すべく、フェンダーパネルとタイヤ隙の縮小に取り組んだそうです。

タイヤの「張り出し感」はクルマの重厚さやスポーティ感の演出にとってかかせないアイテム。その足かせになっていたのが、ホイールアーチ部の強度を確保する為に設けられている「フランジ」と呼ばれる折り曲げ部の存在。

この「フランジ」がボディ意匠面とタイヤとの必要隙を大きくする要因になっていました。冬季にタイヤチャーンを装着した際にスピードと共にチェーンが膨らみ、フランジ部先端にチェーンが干渉してボディに錆が発生するのを防止する為です。

ホイールアーチ フランジ部

そこで新型クラウンではこのフランジを従来の90°に曲げたL型形状からさらに一歩進めてタイヤとボディの隙を縮小すべく180°折り返す成型方法に挑戦。

欧州車では従来から存在する構造ですが、生産性が悪いことから、トヨタでは今まで採用を避けてきた経緯が有るようです。

トヨタ クラウン(旧型)

豊田社長の「デザイン重視」の方針を受けて生産技術部門が新工法を具現化した模様。こうした変革には開発初期段階に於ける生産部門との摺り合わせが重要で、トヨタでは今後の開発に於いても同様な取組みをしていくようです。

追い上げるライバルとの競争に打ち勝つ為には魅力的なデザインとそれを具現化する技術力、そしてそれを可能とする風土作りが必須。

今回のような取組みが同社の今後のデザインを変革して行く日も近いかもしれません。

■新型クラウン ロイヤルシリーズ公式HP
http://toyota.jp/crownroyal/index.html?ptopid=men

■新型クラウン アスリートシリーズ公式HP
http://toyota.jp/crownathlete/index.html

 (Avanti Yasunori) 

【写真ギャラリーをご覧になりたい方はこちら】https://clicccar.com/?p=208500 

この記事の著者

Avanti Yasunori 近影

Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
続きを見る
閉じる