【MONDAY TALK by 星島浩/自伝的・爺ぃの独り言・15 】 前回に続いてモード燃費。ただし今回は<JC08>である。
長らく定着していた10・15モード燃費が欧米の同種テストに比べて車速が低く、高速道路網が広がった日本の現状にも合わないとして見直し、新たな燃費基準にJC08モードが設定された。
具体的なテストモード紹介は省略したい。インターネット検索でグラフをご参照いただこう。2015年に発効する「省エネ法」で燃費基準が改まるのに併せて完全移行するが、13年春以降は新車カタログなどに必ず記載。それまでは10・15モード併記が許される。
試験は一昨年に始まり、2010年の新型車いくつかが参考データ扱いしていたが、11年6月のデミオから併記され、軽乗用車もミラ・イースが初めて公表。負けじとアルト・エコが追従したほか、新型登録車はもちろん、継続生産車もエンジン改良など燃費低減策を実施。早くもJC08競争の火蓋が切られ、メーカー各社が一斉に生産車種の燃費改善に乗り出したことで、俄(にわか)にJC08公表例が増えた。
気になるのはJC08モードだと実用燃費に近づくかどうか。
前回述べた10モードはもちろん15モードと比べても到達速度が70㎞/hから82㎞/h弱に高まり、速度変化幅が広がって、平均車速も22.4㎞/hが24.5㎞/hに向上、試験時間も11分が20分に増えた。車速が上がったほか、グラフの右上がりがより急峻、すなわち加速度が高くなったぶん、アクセル踏み加減も強まる。
到達車速が上がり、加速シーンが増えたためデータ値悪化が懸念される半面、一時停止時間とその頻度も増えた—-お解りだろう。最新車の多くがアイドリングストップ付きで出てきたわけだ。むろん試験は温度・湿度など一定条件下のシャシーダイナモ上で行われる。
10モード時代の実用燃費は表示の60%以下だった。10・15モード時代は60%に始まり、排ガス浄化技術や動力性能向上で65%前後に好転した。心情からもJC08モードだと70%以上を期待したいところだが、半面、モデルチェンジごとに低燃費技術が著しく進んでいるので、よほど巧みに運転しないと70%を割りかねない。
ただし公表燃費が10・15モードより約10%落ちている。その落ち幅がミラ・イースやアルト・エコよりデミオが大きいのは、クラス区分にもよるが、車両重量が軽いほど落ち幅も小さいと考えていい。
さて実用燃費だが、まだ10数車種しか長い距離を走っていないので確かなことを言える段階ではない。実用となると、都心など市街地や郊外、高速道路を含めて200~300㎞走りたいからだ。
都心部ではアイドリングストップが有効で、1時間に20分もエンジンが止まってくれると効果を実感する。時季によっても違う。夏期、エアコンつけっぱなしだと16㎞/lの軽乗用車が、ヒーターもクーラーも使わない春、秋では19㎞/l以上に向上する例があり、その差は1.5トン級ミドルクラスより900㎏以下の軽が大幅になる。またアイドリングストップ中にエアコンが止まる車両と、電動コンプレッサーが働いて快適性を保つクルマとで違ってくる。一時停止後、エンジンストップまでの時間も影響する。最新BMWの待ち時間3秒だと意外に長く感じ、エンジンが止まらないのかと心配になる。
下り坂や減速時に燃料カットして消費量ゼロに近づくクルマが、上り坂では平坦路の2倍もガスを食うから、一応、私の場合は都心から首都高・常磐道で筑波山の中腹まで走って帰る200㎞強を実用燃費の目安にしている。それでも時季による差は小さくない。月2~3度の隠居小屋通いは往復300㎞を超えるが、ほとんど起伏なし、大半が自動車専用道なので、実用燃費の参考には適当じゃないかもしれぬ。
多くの実用燃費データを保有するのは親しい仲間の靑木英夫さんだ。
ペンネーム・車屋四六で寄稿なさっているから、ご存じの方もあろうが、彼は少なくとも40年間、平均40台/年以上もの新型車を300㎞前後走らせて実用燃費を測っている。ちょいちょい私も同乗させてもらうが、なにしろベストドライバーコンテスト優勝歴が示す、丁寧かつ巧みな運転が呼応、およそ私より実用燃費も優れている。
いずれにせよ、軽々に結論は出せないが、よほど好条件でないと、実用でJC08の70%燃費をマークするのは容易じゃなさそうだ。
因みに2015年に発効する新燃費基準は全車両平均で2004年比23.5%改善を目標に掲げている。今後の技術向上をもって臨めば実現するだろうが、その頃にはEVやPHVの実用燃費=電気料金を含めたランニングコストをどうやって測り、どう評価するかに関心が移っているかもしれない。リーフが使用電力量を記録すると発表したが、電気料金となるとケースbyケースだからなァ。★