ダンロップの低燃費タイヤ=エナセーブシリーズも今や5ブランド開発されている。高級セダン向けからコンパクトカー向け、ミニバン用、さらには優れた静粛性を備えたコンフォート系省燃費タイヤまである。
改めてそれぞれのタイヤについて紹介してみよう。
タイヤの転がり抵抗を減らす要件はいろいろあって、単純にタイヤコンパウンドのグリップ(≒粘着性)が少なければいいというものではないらしい。低転がり抵抗の話の中で比較的よく出てくるのがタイヤの変形の話。タイヤのプロファイル変更で転がり抵抗を低減しましたとか、もっと直接的にサイドウォールの変形のさせ方を変えてロスを減らしました、という話。
確かにタイヤの側面=サイドウォールの変形が大きくて、タイヤが転がっていくエネルギーをロスしてしまったら、転がり抵抗は大きくなってしまう。そうかと言ってまったく変形しないものがいいのかというと、そうでもないらしい。
今回乗り比べができたA‐cのエネセーブEC202とAAA‐cのエナセーブプレミアムは、タイヤの変形(≒乗り心地)だけをフォーカスしても、その違いが明確で興味深かった。
乗り心地で比べると、ごく一般的な走り方では、EC202のほうがマイルドで、路面からの当たりが柔らかな感触がある。プレミアムはサイドウォールのテンションがやや強い印象で、全体に硬めというか引き締まった印象。ただ突っ張っているような硬さではなく、タイヤ側面の部分的な変形を抑えて、サイドウォール全体でしなりを作ってショックを受け止めているような感触なのだ。
つまり、これがタイヤのしなりを少なくしたという意味なのだろう。部分的にストレスをかけてしまうのではなく、全体に張りを持たせて力を受け止めることで、ロスを減らしているのだ。
EC202は、じつはちょうどタイヤグレーディングが始まる直前に開発されたタイヤで、開発当初は先代モデルであるEC201に対して転がり抵抗を低減することを目標に開発していたが、その性能がエコタイヤのグレーディングAの狭間で、やや強引に転がり抵抗をAに入れたという経緯がある(と聞いている)。チューニングの内容がどのようなものかは聞き及んでいないが、おそらくサイドウォールの補強は少なからず転がり抵抗低減に役立っているはず。じつはもう少しコンフォータブルなタイヤを狙っていたのではないかと思う。現在でも乗り心地は良好といえるが、タイヤを大きく変形させるような走り方をするとサイドウォールの硬さが顔を出す。
AQUA+エナセーブPREMIUM(左)とAQUA+エナセーブEC202(右)
つまりタイヤの変形のさせ方一つで転がり抵抗が変わるということなのだ。もちろんプレミアムはコンパウンドも新しい技術が盛り込まれており、タイヤのサイドウォールの硬さだけで転がり抵抗が良くなっているわけではないが…。
(斎藤 聡)