クルマのキャラクターに合わせたタイヤ選びというのは大切なこと。クルマによってタイヤサイズが違うのは、クルマの重量が異なるだけでなく、クルマのキャラクターを反映させるためだ。判りやすい例を引けばスポーツカーにはスポーティでグリップのいいタイヤを履き乗り心地のいいセダンにはコンフォート性の高いタイヤを履く。そうすることで、よりそのクルマの性能を引き出したり魅力を大きくすることができるからだ。
例えば、エナセーブ97をプリウスに、RV503をセレナに履くといった選び方だ。エナセーブの特徴は石油由来資源を97%排除した環境面でもエコなタイヤであるところ。ダンロップ省燃費タイヤのフラッグシップともいえるタイヤで、単に転がり抵抗が少ないというだけでなく、環境にも優しいタイヤなわけだ。
省燃費の目的は燃費を良くして最終的にCO2の低減や脱化石燃料にある。将来的に枯渇することが明白な化石燃料の使用をセーブして地球の環境に役立てようということだ。タイヤには合成ゴムや、カーボン、鉱物油など石油由来の材料がたくさん使われている。これを天然ゴムや改質天然ゴム、補強材であるシリカ(二酸化ケイ素)などに置き換えることで、大幅に化石燃料をセーブすることができるし、石油製品製造に伴うCO2の排出量を低減することができる。
…という大げさな話もプリウス用タイヤ選びの要素としては面白いが、実際問題として、エナセーブ97はケース剛性がしっかりしており、プリウスの重いフロントセクションを支えるのにうってつけ。しかもウェットグリップはbと優れているので、雨の日も安心。走らせていても手元にタイヤのしっかり感やグリップしている感触が伝わってくる。
ハンドルを切りだしたときの応答も素直で、ノーズの重さを意識させずスーッとクルマが向きを変えてくれる。乗り心地に適度な張りがあってしっかりしたタイヤを履いているという感覚が常にあるのがいい。
セレナは2リットルクラスの代表的なミニバンで、たくさんの人が乗れる一方、重心が高い。こうしたタイヤはその重さを支えられるだけの剛性が必要となる。不足していると、前輪アウト側だけが摩耗してしまうような偏摩耗が起こったり、カーブを曲がったときにタイヤがヨレてしまうといったことも起こりうる。
もちろんミニバンにミニバン専用タイヤを履かなければいけないわけではないが、ミニバンの特徴に合わせたチューニングが施されているので、普通に走りやすい。
RV503は、タイヤの揺れ感がなく、しかもハンドルを切りだしたときのクルマの動きが穏やかなので、クルマがグラッと来るような動きを出しにくい。無造作に(≠乱暴に)カーブや交差点を曲がっても重心の高いはずのミニバンがスィーッとスムーズに曲がってくれる。乗り心地はやや張りのあるもので、しっかり感重視といったもの。ロードノイズも少なめで、ミニバンで気になるノイズ対策の点でもよくできている。
履けるタイヤはたくさんあるが、その中からよりクルマのキャラクターや使う目的に合ったタイヤを選んであげることで、よりクルマの楽しさが引き出せる。ぜひ、次のタイヤを選ぶときは、クルマのキャラを意識してほしい。
(斎藤 聡)