前の項ではクルマのキャラクターに合ったタイヤ選びを勧めたが、ここではあえて同じタイヤを異なるキャラクターのクルマに履かせたらどんな印象になるのかを報告してみたい。というわけで、コンフォート系省燃費タイヤとして豊富なバリエーションを揃え、タイヤ内に吸音スポンジを入れ静粛性も手に入れているル・マン4を、エコカーの代表モデルとも言えるプリウスと、スポーツワゴンのレガシィ2.5iに履かせてみた。
結論から言うと、どちらにもよく合っていた。ただし、いずれもル・マン風味の効いた乗り味で、その意味でタイヤを積極的に選ぶことで、そのタイヤのキャラクターをクルマに取り込むことができるということでもある。
ル・マン4の特徴は、その豊富なサイズバリエーションだ。35偏平から65偏平まで、20インチから14インチまでと用意されており、軽自動車には専用のトレッドパターンも用意されている。
そのすべてのサイズが転がり抵抗Aであり、ウェットグリップはいくつかのサイズを除きb(それ以外はc)となっている。
レガシィに履いての第一印象はスムーズにタイヤが良く転がるなあ、というもの。転がり抵抗の少なさがクルマの走りに軽快さを演出して身軽な印象を与えている。大柄なレガシィだけど、この軽快な感覚が好感触。しかも、ウェットグリップbというだけあって、乾燥舗装路でもグリップ感はしっかり出ている。とくにカーブでの安定感は純正タイヤと同等レベル。まったく不足感はない。
さらにいいのがノイズの少なさ。とくに耳障りな高周波系のノイズが上手に抑えられているのと、例のスポンジが効き目を発揮する空洞共鳴音の音域となる250Hz付近の、路面の大きな補修跡や継ぎ目を踏んだ時のノイズが少なくなっている。
ハンドルの効きが比較的穏やかな味付けになっているので、スポーティさやシャープさは少し抑えられた格好になるが、その分ゆったりと走る気分になれる。
一方プリウスは、純正タイヤの転がり抵抗が少ないため、転がり抵抗は同等か、もしかしたら少し落ちるかもしれない。その代わり路面をしっかりと捉えているグリップ感があり、これがドシッとした安定感をドライバーに与えてくれる。
もちろんグリップ感が転がり抵抗の邪魔になっていないので、スイーっと走っていく軽快さとどっしりした安心感が不思議なバランスで混在している感じ。ハンドルの応答が比較的スローなのはル・マン4の特徴で、そのためにクルマの動きが丸く滑らか。穏やかな乗り味といった印象になり、この当たりの感触がル・マン4的というるのだろうと思う。
(斎藤 聡)