「台風の目」となるか? VWの世界戦略車「up!」10月1日発売 !

ACEA(欧州自動車工業会)の発表によると、欧州の自動車市場は経済低迷のあおりを受けて、新車販売が8月も引き続き前年比で約9%程度減少するなど、明るさが見えない状況。

 フランスのPSA(プジョー・シトロエン)、イタリアのFIAT、ドイツのOPELなど老舗メーカーが経営の建て直しを迫られる中、米・中での躍進を軸に快走を続けるVWが放つ戦略車「up!」。

 

昨年秋に欧州で発売され、既に1~8月の販売台数が7万台を超えており、続く日本導入は実はアジア初。いよいよ10月1日に発売となります。VGJ(VWグループ・ジャパン)は2012年の総販売台数6万台を目指しており、主力車種のPolo、Golfに続く重要な位置付けのクルマ。

サイズ的にはかつての「ルポ」より20㎜長く、10㎜広く、20㎜高い近似スペックながら、室内スペースに影響するホイールベースは何と100㎜も長いのがウリ。

 

最高出力はルポと同一の75psで、車両価格もほぼ2001年当時と同じです。3ドアが149万円、5ドアは168万円からで、同社のラインアップでは最も安い価格設定。

中でも3ドアモデルの「move up !」は欧州本国との価格差が少なく、素モデルとの比較では約26万円差。(日本仕様と同装備で比較すれば更にその差は縮小)。但し受注生産とか。 

VWが車両価格を100万円代に抑える為に採った策は小型1.0L 3気筒エンジンやシンプルなインテリアの採用、軽量で高効率なミッション(ASG)、以前にもご紹介した5ドア車のポップアップ式リヤドアガラス、運転席側の助手席用パワーウインドウスイッチ割愛など色々。

 

一方で先進装備にはコストを惜しまず、その他はスパッと割り切る潔さが見受けられます。

例えば全車にESP、フロント・サイドエアバッグ、前方の車両をレーザーで検知し、自動でブレーキをかける「シティエマージェンシーブレーキ」(低速域追突回避軽減ブレーキ)を装備。欧州衝突安全テストEuro NCAPは5つ星を獲得するなど、低価格ながら安全にもぬかり無し。

しかも燃費はJC08モードで23.1km/Lですから、価格、燃費共に国産コンパクトカーは戦々恐々かも。販売目標は5,000~10,000台/年とみられ6~7割を新規顧客で稼ぐ方針とか。

最も小さなVW車ながら、一クラス上の安全性、静粛性、品質を兼ね備えたコンパクトカーの刺客、「up!」はそのコスパぶりで日本でも「台風の目」になる可能性が高そうです。

■ACEA (欧州自動車工業会)
 http://www.acea.be/

■VW 公式HP
 http://www.volkswagen.co.jp/index.html

 (Avanti Yasunori) 

この記事の著者

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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