最初に新型レクサスGSのスクープ写真を見た第一印象は、率直に言って「よくわから~ん!」でした。グリル両端の突起やハの字のロアグリルに、レクサスらしい気品が感じられなかったからです。もっとも最近のクルマは、デザインが複雑な立体構造になっているので2次元の写真だけでは判別できないし……と自分に言い聞かせたものでした。唯一実感できたことは「遂にレクサスが、デザイン勝負を仕掛けてきた!」ということでした。
グローバル・プレミアムこと「ジャーマンスリー(ベンツ・BMW・アウディ)」は、それぞれが独創的なアイデンティティと彫りの深い力強さを発散しています。一方従来のレクサスは、日本文化が育んできた繊細さが売りでしたが、ジャーマンスリーの前ではお上品に過ぎたのでしょう。グローバルで競合するには、あまりに控え目すぎたのですね。
そこで新型GSでは、ジャーマンスリーに対抗するべく、「一目でわかる個性明快なアイデンティティ」と「プレミアムカーの王道たるセダンシルエット」を目指したのです。
ひとつ目の「アイデンティティ」は、「スピンドルグリル」です。東京モーターショーで実車を見た時、見た目よりもグリル両端の突起が小さいことに気づきました。またハの字のアッパーグリルと逆ハの字のロアグリルも、決して彫りが深いわけではありません。
「立体形状とメッキ面積」と「グリル両端の突起と上下グリル」のバランスが見る角度で変わるため、表情と立体感がとても豊かなことに気づきました。見るほどに良く感じるようで、まさに日本デザインの新しい境地かもしれませんね
ふたつ目は「セダンシルエット」です。従来のGSは「異軸のスポーツセダン」を標榜していました。今回は天下のジャーマンスリーに真っ向勝負を挑む訳ですから、シルエットもセダンの本道で勝負!そうこなくっちゃ!
夏のビーチでも「出るところは出るプロポーション」が魅力的!?なように、ボンネットとトランクがしっかりと主張するセダンシルエットは、何やら本質的な説得力を持っているようです。
新アイデンティティと新シルエットにチャレンジし、個性とカッコ良さを手に入れた新型GSですが、唯一ボディサイドの垂直の切り立った造形に弱さを感じました。これは、レクサス創設時からに日本車らしさとして織り込まれているデザインだと記憶しています。清楚感や上品さを維持しながら、個性や力強さをどう表現するか・・・。相反する要件ですが、私たち日本文化の中にその答えがあるように感じます。
レクサスではSUVのRXもマイナーチェンジで「スピンドルグリル」を採用しましたから、今後の車種展開が楽しみですね。
(拓波幸としひろ)