スモークガラスを採用するなら、それなりのデザインをすべきでは? と思うのですが、いかがでしょうか?
なんかセダンのプライバシーガラスは、気になってしまう。上:フーガ、下:アテンザ。
スモークガラス、あるいはプライバシーガラスと呼ばれるものは、日本ではセダン、ミニバンに関係なく一般的な装備になってきました。これは、クルマのウィンドウをサングラスのように黒くするものです。光の透過率を下げるので、室内の温度上昇を抑えたり外から室内を見えにくくできるために盗難防止にも効果があるといわれています。
ところで、このスモークガラスには法律による決まりがあるのを知っていますか? かつては、前述のような効果からウィンドウにフィルムを貼ることが流行したのですが、それに起因すると思われる夜間の事故が多発していたのです。透過率の低いフィルムを流行当時の法律の許すフロント以外のすべてのウィンドウに貼ることが原因となっていました。
そこで2003年に道路運送車両法では、前面、運転席側面、助手席側面のウィンドウでは、可視光線の透過率が70%以上なければならないと定められたのです。また全面にフィルムを貼ったクルマでは、ドライバーの視点や存在を確認することも難しかったので、非常に威圧感があるように見えたり、危険を感じたりすることもありましたから、いろいろな面での問題が解消されたともいえました。
そして、この規定ができたことから一定の安全性が確認され、標準装備などの一般化が始まったともいえます。
私たちは慣れてしまったので違和感がないのかもしれませんが(というか意識の外に行ってしまったのでしょうが)、とりわけセダンのリヤドア以降のスモークガラスはいかにもアンバランスな印象があると思うのは私だけでしょうか。またミニバンでもデザインによっては、なんだか中途半端に見えてしまうことがあります。
最近登場のフィットシャトル。
エルグランド。上が旧型、下が新型。旧型は前席と分離されウィンドウの色が違うのも納得。新型はやや違和感ありか。
ムーヴ。気にしなければいいのでしょうが。
とはいえ、これだけスモークガラスが一般化するということは、スモークガラスを支持する人たちが多いということでもあります。その恩恵は決して無視できるものではなく、必要な人たちも多いわけです。それであれば、最低限レス・オプションの範囲を広げてほしいところです。
アコードセダン。スモークガラスの設定されないセダンもいくつかある。
またそれと同時に、ならばスモークガラスを前提としたデザインがあってもいいのではないだろうか、なんてことも思います。スモークガラス前提であればセダンであっても、前後ドアのウィンドウのサイズを大きく変えることもできるでしょうし、前後が連続したデザインでなくてもいいはず。またボディカラーとの連携や、ボディ面に異素材を採用してスモークガラスと合わせるということがあってもいいのではないでしょうか。
日本の特別な事情だからなのか、デザインサイドは受け身の姿勢に見えますが、もっと積極的に利用するやり方もありかもしれません。
新型メルセデス・ベンツMクラス。欧州ではこれが一般的。北米ではSUVなどにスモークを採用するクルマも増えている。スモークガラスのメリットも尊重したいところ。
また余談ですが、最近の覆面パトカーもスモークガラスの恩恵にあずかっています。フロントと運転席、助手席側は普通のままなのですが、クラウンの覆面パトカーなどは標準仕様より明らかに濃くしているようです。(でも、あれは違反ではないことになります。)それで、ルーフ裏に格納した赤色灯なども隠せているのですが、それ以上にぴたっと後ろにつかれると、ルームミラーからではヘルメット姿の警察官が乗っていることすらわからないほど暗くなっています。ぜひ気を付けてくださいね……
来週はその2として、自動車メーカーの事情からスモークガラスの普及によって起こっているデザインの変化についてちょっと触れてみる予定です。
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(MATSUNAGA, Hironobu)