今年のF1は前後重量配分が決められてるのを知ってましたか?【F1】

ウチの会社の近くには、やたらと鉄骨を積んだトレーラーが停まってるんです。まあ、道路が広めでちょうどいいんでしょうね。で、そのトレーラーってトラクターヘッドに比べ、ずいぶんと荷台が沈んでるんで、「トラクターの重量配分ってどれくらいなのかなぁ。もしかして、道路運送車両法とかで決まってるのかな」って話をしてたら、「今年のF1も決められてますからね」なんてことを耳にしました。

そうだったんですか。

さっそく、モータースポーツライターの“えんとし”に聞いてみよう。

−−−今年のF1マシンは前後の重量配分がルールで決められているって話、ホント?

「よくご存じですね。そうなんですよ。今年の技術規則の4.2項に『フリー走行と予選中、マシンは常に“前部車重”が291kgを、そして“後部車重”が342kgを下回ってはいけない』というものがあるんです」

−−−決勝レースは?

「去年から途中給油が禁止になったんで、今は満タンスタート。当然、燃料の量によって総車重も前後比率も常に変化するわけですが、今のF1は予選後に大きくマシンのセットアップをいじることもできないルールなので、まあ、マシンの乾燥重量の前後比率に関してはほぼいつも4.2項の範囲内、と考えていいんじゃないかと思います」

−−−どれくらいの前後比率になるのかな?

「F1マシンの最低重量は今年から640kgですから、前後重量比率をおよそ45.5:54.5〜46.7:53.3の範囲に収めろ、ってことですね」

−−−なんでそんなことルールで決めるの?

「理由は主にふたつあると思います。最近のF1エンジンには開発凍結規則というのがあって、大きな改良ができない状況になっているんです。そのせいもあってか、空力や重量配分が勝敗のカギを握る大きなファクターになった。そこで、接戦を演出するためにも、どこかのチームだけが抜きん出ないよう、セットアップの幅を縮めておこう、ってことなんじゃないですかね」

−−−自由競争にばかりはしていられないってことか、エンターテイメントでもあるF1としては。もうひとつの理由は?

「今年からKERSの使用が再開されました。ブレーキング時のエネルギーを回生して、加速装置的に“モアパワー”として使うアレですね。KERSを積むとなると、それなりの重量物を、ある程度決まりきった位置に置かざるを得ない面があるんだと思います。マシン全体の最低重量が決まっている以上、あんまり関係ないじゃん、と思われるかもしれませんが、できればバラストをたくさん使って、低重心化とか、重配の理想化とか、やりたいじゃないですか」

−−−KERSがあると、そのへんの自由度が下がっちゃうわけだね

「そうです。重配優先でKERSは使わない、とか言うところが出てくると、環境問題も重視していかなければならない御時世ですから、F1界の“お上”としては辛い。だから『前後の重配を決めておけば、KERS使用への抵抗感も薄れるだろう』的な考えもあるんじゃないかと思います。最低重量自体もKERSの搭載等を考慮して今年から重くされていますしね。まあ、僕も難しいことはよく分かんないですけど(笑)。ちなみにさっきの4.2項は、今のところ今年だけの時限立法です」

なるほど、いろんなことが縛られたり、採用されたりしてるんですね。勉強になりましたm(_ _)m

(小林和久)

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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