フォルクスワーゲンがオペルを買収して世界No.1を目指す?

ドイツメディアによると、VWがオペル買収に関心を持ち、オペルの企業価値を算出して親会社のGMに伝えたそうです。但しGMはVWの提示価格が低過ぎるとして交渉には至っていないとか。先日、VWのヴィンター・コルンCEOがドイツメディアのインタビューでオペルの売却を煽るような発言をしたとしてGMに噛み付かれたばかりですが、今度は当のVWがGMに面と向かってオペルの買収を提案したことになります。

VWは韓国のヒュンダイがオペル買収に向けてGMと交渉入りしたとの報道を受けて焦ったのか、「それなら是非オペルをVWに売却を」と、直接GMに持ちかけた構図です。

実はこのVWとGMの両社、2011年度の世界販売No.1を競い合う仲。実のところ、GMとしても3年連続世界販売1位のトヨタが震災被害でひるんでいる隙にNo.1に返り咲く絶好のチャンス。巨額の赤字で経営の足かせとなているオペル部門を一刻も早く切り離したいのが本音と思われます。

とは言え、GMの株主への手前(オペルに大量救済投資してきた)も有ったりで、露骨に本音を表に出す訳にもいかないでしょうが、 内心はVWからの甘い誘いに揺らいでいる筈。 もう少し渋ってVW提示の買収額上積みを期待しているのかもしれません。

ところで、VWが何故オペル買収に動き出したかと言えば、スズキとの関係が絡んでいるようです。と言うのも、資本提携中のスズキが18日、VW との提携見直しの意向が有る事を表明。スズキが提携当初から主張している「対等のパートナー」関係が崩れ出しているのが原因だそうです。

2018年に世界販売No.1を狙うVWは提携後、予測どおりスズキの販売成果をVWグループの一員として取り込む姿勢を見せ始め、スズキがこれを拒否した事で関係が硬直化しているとか。

以前にも示したとおり、スズキの世界生産台数は300万台/年レベル。これをVWの年間目標800万台に上積みすれば1100万台となり、いきなり世界一に躍り出る事も可能。ちなみにトヨタが先日上方修正した今年度の最新生産目標台数は770万台。

VWがスズキに対して圧力をかけ始めたのも当然の成り行きとも言えます。しかし、VWの業績に組込まれる事を良しとしないスズキはFIAT社との提携強化の動きに出たようで、ある意味、VWを牽制する姿勢を明確にしました。

VWはヒュンダイからの猛追も受けており、スズキとの関係がこれ以上発展しないなら今度はオペルを傘下に入れて販売台数の更なる拡大を図ろうという意図が見え隠れしています。ドイツの老舗企業であるオペルにとってもヒュンダイ傘下に入るよりもVW傘下の方が業績回復が早いかもしれません。プラットフォームの共用化でコストダウンが可能になるからです。

フォードがリストラの一環でジャガー&ランドローバーをインドのタタグループへ、ボルボの乗用車部門を中国の吉利汽車に売却した事例も実際に存在する訳で、今後のオペルの身の振り方が大いに注目されます。

こちらも併せてお読み下さい。 https://clicccar.com/2011/07/22/44432

(Avanti Yasunori )

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この記事の著者

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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