フォルクスワーゲンが今秋、世界販売でトヨタを抜く!?

VWグループが好調を理由に2011年度の世界販売目標を800万台に設定したようです。昨年の世界販売実績が714万台だった事を思うと、実に12%もの目標を上乗せした事に。

http://www.autoevolution.com/news-image/toyota-cuts-ties-with-volkswagen-in-japan-14822-1.html
同社はご存知のように「Strategy 2018」を展開中で、2018年までにトヨタを抜いて1,000万台を超える販売台数を達成し、且つグループ全体の利益率を8%以上に引き上げて世界No1の自動車メーカーになることを目指しています。

ちなみに2010年度の世界販売台数は3年連続でトヨタが第1位(842万台)、2位が僅差でGM(839万台)、3位がVW(714万台)と熾烈な争いを繰り広げている訳ですが、VWと1位のトヨタとの間には約100万台以上の差が横たわっています。

VWは今回目標を高く設定した理由として、昨年に前年比で13.5%増を達成した事や最近の中国や米国での販売好調などを挙げているようですが、内心では震災の影響で生産に陰りが見られるトヨタをこの機に一気に抜き去ろうと考えているに違い有りません。

2011年1-6月上半期のVWグループ(Audi、セアト、シュコダ等含む)の世界販売は253万台でした。それからすると年間800万台の目標は何やら強気の構えにもとれますが、果たしてその実現性は如何程の物なのでしょうか。それを知るには販売台数の推移を可視化して勢いを検証する必要があります。

そこで早速、昨年1-3位争いで凌ぎを削った他の強豪2社の動きも含めて現状を調査する事に。とは言え、そう都合よく数値が転がっている訳ではないので、可視化の為のデータ収集には結構手間取りました。 そうこうしながら作り上げたのが下のグラフになります。

赤色実線がVWの1-6月の世界販売実績です。同様に青色実線がトヨタの1-5月の世界生産実績。3.11震災以降にトヨタの勢いが衰えているのが一目瞭然ですが、データを見る限り、5月までの間では未だVWがトヨタを抜き去るには至っていない事が判ります。

次に緑色がGMの実績です。GMは情報量が乏しく販売実績値は3月分のみですが、辛うじて1位(222万台)である事が判ります。そこから一気に800万台超え(昨年:839万台)を目指しているとの情報を元に年間販売目標を850万台と仮定してみました。

今期末となる2012年3月(右端)に各社の目標販売台数をインプットして仮想線で結んでみると、VWの販売予測線が急勾配に折れる結果となり、トヨタの販売予測線を10月頃に追い抜く形に。つまりこれはVWグループが目標とした800万台を達成するには好調の持続に加えて、新たな取組みが必要である事を物語っています。つまり、少々背伸びした目標値にしているという事でしょう。

そして参考までにVWとの共同開発で提携関係にあるスズキをグラフに加えてみました。年間販売目標台数を昨年実績である288万台+αの300万台にセット。仮にスズキとVWを連結すると、5月時点の実績値で325万台と、GMといい勝負に。

その後は右肩上がりでダントツ状態となり、2012年3月には1100万台に達する計算に。これなら2018年1000万台のVW長期目標を今期中にクリアしてしまう事になります。これがVWの狙いであろう事は間違いありませんが、この仮定は実現しません。何故ならスズキはVWと対等の関係を堅持しており、VWの業績に取り込まれる事を拒否しているからです。

以上の検証の結果、何も起きなければGMが世界一を奪還。2位3位については微妙で、依然、VWとトヨタからは目が離せないといったところでしょうか。 ただこれをトヨタが黙って見ている筈は無く、経営効率を上げるべく子会社の統合に乗り出したのは既報のとおりです。

関東自動車とトヨタ車体を年内に完全子会社化した上で、7月には関東自動車と他の関連会社を経営統合する等で応戦の構えを見せています。 以上、今後も全く予断を許さない状態が続きそうというのが解析結果でした。如何でしたか?

こちらも併せてお読み下さい。 https://clicccar.com/2011/06/23/35723

(Avanti Yasunori )

【画像がすべて見られない方は>>> https://clicccar.com/42619

この記事の著者

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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