昨年、世界初の市販燃料電池自動車「MIRAI」を発売したトヨタが、燃料電池の性能向上に繋がる技術を開発したと発表しました。
これはトヨタと一般財団法人のファインセラミックスセンター(以下、JFCC:JAPAN FINE CERAMICS CENTER)が共同で開発に成功したもので、燃料電池に使用されている「白金」触媒の性能・耐久性を向上に繋がるものと期待されています。
今回、トヨタが発表したのは、燃料電池(FC)の化学反応を促進する触媒として不可欠な「白金」の反応性低下(いわゆる劣化)に至る挙動をリアルタイムで観察できる新たな手法を開発した、ということです。
この手法は、トヨタとJFCCの共同研究グループが、観察・分析用の「透過型電子顕微鏡」の中でFCスタックと同じ発電状態を模擬できる新しい観察用サンプルの作成に成功し、数ナノメートル(nm : 10億分の1メートル)程度の「白金微粒子」のレベルで、反応性低下に至る挙動プロセスの観察を可能としたものです。
従来から、FCに使用されている触媒の「白金」の反応性低下は、「白金微粒子」の粗大化に起因することは知られていましたが、これまでの観察手法では、粗大化に至るプロセスをリアルタイムで把握することができず、粗大化の要因を解析することができなかった、ということです。
今後は、今回開発した観察手法により、粗大化の要因として、「白金微粒子」の担体(土台)となるカーボン上で粗大化に至る挙動を引き起こす箇所やその時の電圧、さらには、担体の材料の種類によるそれらの違いなどが明らかになり、反応性低下のメカニズムを解析し、FCに不可欠な触媒である「白金」の性能・耐久性向上のための研究・開発指針を得ることができる、と期待されているのです。
今回は、トヨタが今回の観察手法の研究に取り組んだ経緯と、新たに開発した観察手法の特徴を紹介します。