「新型インプレッサのすべて」が発売される少し前に、「歴代インプレッサのすべて」が発売されました。デザインの変遷を見ると、特に2代目では「丸目→涙目→鷹目」と3つの顔を展開。自分探しの旅というか、アイデンティティを確立するべく悪戦苦闘していたことが伺えます。
先日開催の東京モーターショーで見た新型インプレッサは、スタイルには塊感があって質感も高く、レガシィ流のフロントマスクもビッ!と決まっていました。ただ正直第一印象では、「これがインプレッサ?」という何ともいえない違和感を覚えたのです。
すべて本を読んでその理由が、Aピラーを20cmも前進させた「シルエットの大変更」にあることに気づきました。
スバル車の場合、水平対抗エンジンが平らで広く、フロントサスペンションの前方に低く搭載されるため、ボンネットも低くて広くなっていました。つまり、水平対抗エンジンのパッケージングの骨格が、そのままシルエットになったいたのですね。
一方新型インプレッサでは、室内拡大のためにAピラーを大幅に前進させ、対人衝突対策でボンネットをかさ上げしました。その結果、最近流行のデザイン手法である「ボンネットが高いキャビンフォワード」のシルエットになりました。
モーターショーで最初に感じた違和感は、水平対抗エンジン・シルエットが薄まったからだったのですね。でも機能をしっかりと踏まえた造形ですから、シルエットの変化は時代の要請なのかもしれません。
またフロントデザインでは、従来標準車は顔立ちが大人しい印象でしたが、随分目鼻立ちがクッキリしてきました。スバルのアイデンティティが、レガシィ流の「ホークアイ(鷹目)」に「ヘキサゴングリル(六角形グリル)」を組合せる方向に固まってきたのです。
思い起こせば、強力なライバル同志だったインプレッサWRXと三菱ランエボが、「スバルのザパティナス顔」か「三菱のブーレイ顔」かなんて言われるくらい、個性を競い合っていました。残念ながら、両社とも定着するには至りませんでしたね。
新たなアイデンティティを確立した4代目インプレッサですが、冒頭書いたように第一印象では何となくシルエットに違和感を覚えるかもしれません。でも、実際にハンドルを握って試乗してみて納得し、クルマを降りてボディを撫でながらじっくり眺めて更に大納得!そんないかにも味わい深い、スバルらしいクルマに仕上がってると感じました。