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●クルマを利用した節税効果はどういう仕組みなのか、減価償却とは何かを考える。
「クルマを買うと節税になる」という話を聞いたことがある人は多いと思います。しかし、なぜ車を買うと節税になるのかご存知でしょうか? クルマが節税につながる理由には「減価償却」という仕組みが関わっています。
今回は、自動車の減価償却の仕組みと節税につながる理由について解説していきます。
・減価償却とは一体どんなもの?
減価償却とは、事業で数年間にわたって使用するものに関して、その費用を数年間に分けて計上する計算方法のことです。計上する期間のことを「耐用年数」と呼び、この期間は法律で定められています。減価償却は、自動車や工具などの「数年以上に渡って使用できるが、時間が経つごとに価値が下がっていくもの」に適用されます。
減価償却には「定額法」「定率法」という2種類の計算方法があります。原則として、個人事業主は定額法、法人は定率法を用いて計算することになっています。
定額法は、毎年同じ金額を耐用年数にわたって計上する方法です。対して定率法では、経費の総額から一定の比率(%)を掛けた金額を計上するので、初年度に計上される金額が高くなり、年々減っていきます。
耐用年数全体で見れば、どちらの計算方法を用いても同じ額を経費として計上できますが、初年度に多く計上できる定率法の方が節税に有利と言われています。ただし、個人事業主の場合は申告をしないと定率法に変えられないので注意してください。
・車種による耐用年数の違い
自動車は減価償却の対象となっていますが車種や用途によって耐用年数が異なります。自動車の耐用年数は6年、総排気量0.66L以下の小型車(軽自動車)は4年と定められています。ただし、運送事業用や貸付自動車業用の自動車は、小型車が3年、大型乗用車が5年となっています
新車の場合は上記の通りですが、中古車の耐用年数は「法定耐用年数-経過年数+(経過年数×0.2)」という計算で求められます。ただし青色申告の場合、30万円未満の経費は一括計上になるので、30万円未満の中古車を買うと購入した年に全額計上されることになります。
では、新車と中古車のどちらを購入した方が節税面でお得になるのでしょうか。例を挙げて計算してみます。
定額法を用いる場合、1年に計上される費用は「取得価額×償却率」で求められます。300万円の新車を購入すると法定耐用年数は6年なので、償却率は1/6=0.167となり、300万×0.167=50万円を6年間にわたり経費として計上できます。
一方、3年落ちの300万円の中古車を購入した場合、耐用年数は「6年-3年+3年×0.2=3.6年」となり、小数点以下切り捨てで3年になります。償却率は1/3=0.33になるので、300万×0.33=100万円を毎年計上できます。
新車だと1年あたりの計上額が50万円のところが、中古車では100万円となり、中古車の方が1年あたりの減価償却費が大きくなることがわかります。減価償却費が多くなるほど課税対象額が減るため、中古車の方が節税の効率としては有利に働くケースが多いです。
・なぜ会社や有名人はクルマを買って節税する?そのしくみとは
会社や有名人がクルマを買うのは、会社の法人税や個人の所得税を減らすためです。法人税や所得税は利益に対してかけられる税金で、利益が大きいほど税額が高くなります。
「利益=売り上げ-経費」と考えられるので、クルマを買って経費を増やすことで利益を減らして法人税を減額することができます。そのため、会社の経営者や有名人はクルマを購入して経費として計上し、法人税や所得税を節税しているのです。
ただし、クルマが経費として認められるのは、あくまで事業に用いる場合です。プライベートだけで使うクルマは経費として計上できないので注意してください。
また、いくら節税に繋がるからといって、現在必要性の低いクルマを無理に購入するのは考えものです。使わないクルマを買うよりも、普通に税金を払った方がトータルでお得な場合もあります。クルマの必要性を考えた上で購入するようにしましょう。
・まとめ
今回は、減価償却の仕組みとクルマを買うと節税につながる理由について解説してきました。クルマを経費として計上することで、課税対象額を減らし、税額を少なくすることができます。経費の計算方法を理解し、かしこく節税していきましょう。
(文:佐々木 亘)