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●対面契約による販売や来店入庫がベースになっていたディーラーは今後の営業方法は?
5月14日に東京などの8都道府県を除き、39県の緊急事態宣言が解除されました。これに伴い、営業自粛要請も解除される地域が多く、「新しい日常」を考えながらの営業再開、経済活動の再開が各所で行われています。
これまで、対面取引が多かった自動車ディーラーは、現在どのような対策が取られ、今後どのように営業していくのか、東北地方の自動車ディーラーの動きを例にとって考えていきます。
・来店中心の営業スタイルを維持するための対応
緊急事態宣言が発令され、営業時間の短縮、マスクの着用や各種消毒の徹底を中心に、感染予防措置をとってきた自動車ディーラー各社。現在はどのような営業スタイルになっているのでしょうか。
基本的な感染予防対策は現在も続いて行われており、従業員の手洗いうがいや健康チェック、ショールームの換気、接客時のマスクの着用、支払いやキーの受け渡しには専用トレイの使用をしているところが多く見られます。
ハード面でも入口に消毒液を設置、商談や待合スペースのイスや机の間引き、キッズコーナーの使用禁止、喫煙室の使用禁止、整備車両や試乗車や代車などの消毒作業、呈茶は紙コップで行うなどの対策が行われています。
来店・対面での取引がベースとなっている自動車ディーラーの営業では、ユーザーがより安心して来店できる環境をいかにして作り出すのかという点が課題になっており、できうる限りの感染リスクを減らす動きを行っています。
・営業時間や外出スタイルは、販売会社によって対応はまちまち
緊急事態宣言発令中でも、休業要請の対象外となっていたのが自動車整備工場です。クルマという生活に密接したものを安定的に動かすために必要な事業として考えられているためです。
しかしながら首都圏を中心に、緊急事態宣言発令後には営業時間短縮や土日休業を決めた自動車ディーラーが多く存在します。トヨタ系、ホンダ系、日産系、スバル系のディーラーを中心に、その動きが加速しました。
対して広域ディーラーのマツダ系・三菱系のディーラーでは感染対策としてマイカーを使う人が増えた状況を考慮し、通常営業が必要だと判断。営業時間を短縮し、休業日を増やすなどの措置を行わない店舗が多くありました。
どちらの考え方も間違いとは言えず、対応が二分する形となりました。
緊急事態宣言解除がされた東北地方の自動車ディーラーでは、解除後の対応は様々です。最も多かったケースでは、先に上げた消毒やソーシャルディスタンスの確保を行いながら、通常通りの営業を行っていく形です。
営業時間や営業スタイルは通常通りに戻し、感染予防に思慮しながら、これまでの営業スタイルを維持していくというものでした。
しかし、中には現在も1時間~2時間程度の営業時間の短縮を行ったり、定休日を増やして店舗の稼働日数を減らしているディーラーもあります。また、緊急時を除き、点検業務での自宅へのクルマの引取や納車を行うことや、営業マンの外出を伴う営業活動を原則中止しているディーラーも見受けられました。
ユーザーと従業員の安全をどちらも守っていかなければならない自動車ディーラーにおいて、今後の営業スタイルのスタンダードモデルを作り出すための、重要な局面がすぐそこまできているのでしょう。
政府が推奨する「新しい日常」に対して、どちらの方式がよりマッチングしていくのかは、慎重に考えていく必要がありそうです。
・新車が売れない、営業マンの悲鳴
国民全体で外出の自粛が進み、自動車ディーラーに足を運ぶ機会も減っている昨今、新車の販売現場は非常に厳しい状況が続いています。
2020年4月の新車販売統計の速報によると、登録車の販売台数は前年同月比25.5%の落ち込み、軽自動車は前年同月比33.5%の落ち込みとなっており、2019年10月の消費税率引き上げ時期以来の大幅な落ち込みとなりました。
2020年5月からトヨタではチャネルごとの販売車種の区分けがなくなり、全チャネルで全車種併売を行い、さらには新型ハリアーの発表など販売拡大を狙える時期となっていますが、実情はかなり厳しいようです。
あるトヨタ系ディーラー営業マンは「取り扱い車種は増え、販売の幅が広がったのは現場としてはやりやすいが、来店客は大幅に減少して、4月よりもさらに売れない日々が続いている」と話していました。
毎年この時期に大規模な販売イベントを外部施設を貸し切りにして行っている販売会社では、今年はWEB上での販売会を行うなど、各社販売面に工夫をしながら打開策を見出そうとしています。
対面商談がスタンダードとなっているクルマの販売方法にも、少しずつ転換期が来ているのかもしれません。
・まとめ
新型コロナウイルスの対策を行いながら、営業方法を模索する自動車ディーラーについて紹介してきました。経済活動が冷え込む中、自動車ディーラーでも厳しい時期が続いています。
今後も長くコロナウイルスと付き合っていかなければならない中で、クルマの販売や整備をどのような形で進めていくのかを考えていかなければならないでしょう。
(文:佐々木 亘)