■マスク生産だけでなく、簡易ベッド台などの多岐にわたる試みをスタート
フォルクスワーゲン・グループやGM、フォードなど、大手自動車メーカーがマスクや人工呼吸器の生産に乗り出すなどの動きを見せています。ニューバランスなど、いろいろな業種がマスク生産を開始しています。
このような状況下、トヨタは2020年4月7日に、フェイスシールドの生産を開始すると発表しました。なお、現時点では構想段階のものや着手直後のものも含まれているそうですが、同社は関係者の声を聞きながら、トヨタグループとして可能な限りの協力していきたいとしています。
まず、「医療用フェイスシールド(防護マスク)」の生産。医療現場で不足している医療用フェイスシールドを試作型や3Dプリンターなどで製作し、医療機関に提供していくとしています。具体的には、トヨタ自動車貞宝工場において、試作型による医療用フェイスシールドの生産準備を推進していて、週500~600個程度から生産を開始する予定だそう。加えて、グループ企業でも生産が可能か検討が開始されています。
「トヨタ生産方式(TPS)」活用による医療機器メーカーの生産性向上への協力も掲げています。医療機器メーカーによる人工呼吸器を始めとする医療機器の増産に対し、トヨタ生産方式(TPS)のノウハウ活用による工程改善など、生産性向上への協力を検討しているそう。現在、製造者側を含めた関係各所と具体的な対応について調整が開始されています。
次に、「軽症の感染者移送に対するサポートの検討」。東京都内を中心とした感染拡大地域において、軽症の感染者を他の医療機関や待機施設、自宅などに移送する際の運転者の感染を抑えるために、JPN TAXIなどを中心に、車内での飛沫循環を抑制する方法について、検討を開始しているそう。
さらに、「サプライチェーンを活用したマスクなど衛生用品の調達支援」の取り組みも行われます。これは、政府による自工会への調達協力要請を受け、トヨタ自動車のサプライチェーンを通じ、医療用マスクや防護服、体温計など衛生用品の調達支援に向けた動きだそうです。
アイシン精機も動いています。医療機関で活用可能な備品の供給として、病院向けの簡易ベッド台、消毒液容器、医療機関等での簡易間仕切り壁など、医療機器以外で必要とされる備品の生産での協力の可能性について、同社が調査を開始。
デンソーは、「治療薬開発や感染抑制に向けた研究支援への参画」も盛り込まれています。治療薬開発や感染抑制に向けた各国の研究支援を目的に、カナダD-wave社が進める量子コンピューターの利用サービスの無償提供プロジェクトにデンソーが参画。利用促進に向けた技術支援を行っていくそうです。
ほかにも、生産活動用マスクの自社内生産による自給自足、需給緩和に向けた取り組みも盛り込まれています。マスク不足への対応として、生産活動においてグループ内で必要なマスクの自給自足を進めるため、自社施設内でのマスク生産を検討しているそう。市場からの調達量を低減することで、社会におけるマスク不足の緩和に少しでも寄与できればという考えによるものです。
デンソーは、製造現場を中心に社内で必要となるマスクを自主生産することを決定。4月中の生産開始を目指して試作品の生産に着手していて、軌道に乗れば10万枚/日の量産が可能となる見通しとしています。トヨタ紡織も4月上旬より刈谷工場で生産を開始(1500枚/日)。順次、増産を図るとともに、5月以降は猿投工場に移管、1.2万枚/日への増産を計画中だそうです。ほかにも、アイシン精機、ダイハツ工業、日野自動車などでもマスクの自社生産を検討中。
マスクなどの生産のほか、復興を牽引していくための企業体質改善に向けた取り組みを生産現場、事務職などを問わず広く推進していくとしています。
(塚田勝弘)