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●フィットCROSSTARとロッキー/ライズ、SUVチックなコンパクトカー対決にシロクロつける!
フィットの5つのスタイリングの中でもやや特殊なモデルである、フィットCROSSTAR。
アウトドアを連想させる、アクティブな専用エクステリアをまとい、地上高を上げ、専用のバンパーを装着するスタイリングで、人気のタイプとなっています。
昨年11月に発売されたコンパクトSUV、ダイハツロッキー/トヨタライズは、今年1月・2月と、2ヶ月連続で「登録車販売台数ナンバー1」を達成しており、昨今はアウトドアシーンに似合う、コンパクトなクルマに人気が集まっているようです。
今回はフィットCROSSTARとロッキー/ライズをピックアップし、パッケージングやエンジンの比較、シート性能や室内の使い勝手の比較、そして走行性能の比較、といった3記事にわたり、レポートしていきます。
★ホンダフィット e:HEV CROSSTAR 2WD
車両本体240万8610円+Mオプ18万1500円+Dオプ31万0266円(10%税込)
★ダイハツロッキー G 2WD
車両本体200万2000円+付属品合計29万5801円(10%税込)
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■小回り性能は引き分けだが、ハンドル操作量はフィットCROSSTARの方が少ない!
■静粛性と加速フィーリング勝るe:HEV、パワフルさで優るロッキー/ライズのガソリンエンジン
■ホンダセンシング標準装備は高評価。ただしコスパの良さはロッキー/ライズが圧勝!
■まとめ
■小回り性能は引き分けだが、ハンドル操作量はフィットCROSSTARの方が少ない!
フィットCROSSTARのボディサイズは4090×1725×1545(全長×全幅×全高[mm])、車両重量は1200 kg、ホイールベースは2530 mm。対するロッキー/ライズは3995 ×1695 ×1620(全長×全幅×全高[mm])、車両重量は980 kg、ホイールベースは2525 mm。
ロッキー/ライズの方が30ミリ幅狭く、75ミリ背が高くなっており、ロッキー/ライズのほうが、ボディサイズはやや大きいです。
最小回転半径は、フィットCROSSTARが5.0m、ロッキー/ライズが5.0m。両車とも小回り性能は同等です。ただし、フィットCROSSTARはハンドルの中央toフルロックまでの操作角がロッキー/ライズよりも小さく(2割程度少ない印象)、少ない操舵角で旋回ができます。
ちなみにフィットHOMEはステアリングギア比がよりクイックになっており、より少ない操舵角で、旋回が可能です。
余談ですが、フィットHOMEの最小回転半径は5.2m、タイヤ外径が大きくフロントタイヤの転舵角が厳しいはずのCROSSTARよりも大きいのです(HOMEのタイヤサイズは185/55R16、CROSSTARは185/60R16)。
その理由は、CROSSTARが最低地上高を上げたことでタイヤの転舵スペースに余裕ができ、フロントタイヤがより切れるようになったことが要因と推測します。
■静粛性と加速フィーリング勝るe:HEV、パワフルさで優るロッキー/ライズのガソリンエンジン
排気量1.5リッターのガソリンエンジンを発電用兼動力用として備える、フィットCROSSTAR e:HEV。その魅力は、静粛性と滑らかな加速フィーリング、そして燃費です。走行中にエンジンによる発電が始まっても、非常に静かで不快な振動もなく、ノイズ対策が上手くなされていることが分かります。
加速時に聞こえるエンジンサウンドも、スムーズに回るフィーリングがあり、好印象。モーターによる加速フィーリングも実に滑らかで、速さはそれほどありませんが、心地良く感じます。なお、WLTCモード燃費27.2km/Lは、コンパクトカーカテゴリ内でトップクラスの良燃費。1.3リッターガソリンエンジン仕様のCROSSTARは19.2km/L(WLTC燃費)です。
対するロッキー/ライズは、最大馬力98ps/最大トルク14.3kgmを発生する1.0リッターガソリンターボエンジンを搭載。アクセル開度はやや早開きに設定されており、「1.5リットルエンジン相当の動力性能を与えた」とのダイハツ開発担当の説明の通り、3人乗りの坂道登りでも、苦労することなくグイグイと登っていくだけのパワフルさがあります。
加速時のサウンドも荒々しく、いかにもガソリンエンジンだという存在感を強く感じます。なお、WLTCモード燃費は18.6km/Lと、フィットの前ではかすんでしまいます。
エンジンの静粛性や加速フィーリングは、圧倒的にフィットCROSSTARの勝ち。しかし、単純な加速の良さは、車重が980kg程のロッキー/ライズが勝ります。
e:HEVシステムは通常のガソリン仕様に対して約100kgの重量増となるため、CROSSTARの車重は1200kgにもなります。この重量が動力性能に効いてしまっているのは確かです。
■ホンダセンシング標準装備は高評価。ただしコスパの良さはロッキー/ライズが圧勝!
ホンダはN-WGNやN-BOXなど、軽自動車にいたるまで、ホンダセンシングを標準搭載し始めています。衝突被害軽減ブレーキは当然のこと、程よい車間距離でコントロールしてくれて車速ゼロまで追従するACCや、適切な介入量でハンドルアシストをしてくれるLKAS(レーンキープアシスト)など、その動作の安定性と安心感の高さは、Honda Sensingの魅力です。
対するロッキー/ライズには、上級グレードのPremium、G(ライズはZ)に、全車速追従式ACCとLKCが標準装備されます。もちろんその性能や精度はトヨタの技術力をそのまま搭載していますので信頼性も高く、優秀な装備です。
コンパクトカーの場合、タイヤグリップを稼ぐためにタイヤ幅を太くすることが物理的にできません。アウトドア向けなどで荷物を積む機会が多いSUVやクロスオーバーの場合には一層厳しくなり、高速直進性やコーナリング性能はどうしても不利になってしまいがち。そのため、こうした先進運転支援アイテムは、もはや必須だと考えられます。
■まとめ
クルマの質感の高さや先進装備が充実したフィットCROSSTARですが、e:HEVだと車両価格が240万円を超えてしまいます。ガソリン仕様のCROSSSTARは約30万円低い価格でありますが、Mオプの2トンカラー(10万4500円)やDオプの9インチナビゲーション(19万8000円)は別途用意する必要があり、総額200万後半になってしまいます。
それに対して、ロッキー/ライズは、車両価格は200万円程度、ナビゲーションも9インチのディスプレイオーディオパッケージが9万7900円と非常にリーズナブル。
コストパフォーマンスは圧倒的にロッキー/ライズが優れており、フィットCROSSTARのデザインがどうしても欲し方でなければ、積極的におススメする理由が見当たらない、というのが筆者の印象です。
次回は、両者のシートの座り心地や荷室の使い勝手について、レポートしていきます。
(文:自動車ジャーナリスト 吉川賢一/写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)