大津市の保育園児2人死亡事故、禁錮4年6月の判決は軽過ぎではないのか?【今井亮一コラム】

■禁固刑の交通事故はどんな事故の前例があったか?

2019年5月、滋賀県大津市、琵琶湖畔のT字路交差点で、歩道で信号を待つ保育園児らに車が突っ込み、園児2人が死亡、重軽傷者多数の重大事故が起こった。
その刑事裁判の被告人(53歳女性、無職)に対する判決が大津地裁で2020年2月17日に言い渡された。
禁錮4年6月。(※この6月は「ろくげつ」と読む。)
交通事故の法定刑は7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金だ。
そのなかで禁錮4年6月は重いのか軽いのか。

大津の事故現場への献花
大津の事故現場への献花(事故後の様子)

私は交通事故の裁判もだいぶ傍聴してきた。犯罪性のない一般市民が過失で起こすのが交通事故であり、死亡事故でもほとんどが執行猶予で終わる。
禁錮4年6月の判決(※)を1件だけ傍聴した。居眠り運転でツーリングバイクの列に突っ込み、2人死亡、4人が重軽傷というケースだった。(※禁錮も懲役も3年を超えると執行猶予はつかない。)
4年台の禁錮刑はそれ1件のみ。5年台は2件傍聴した。
1件は禁錮5年。無免許や速度違反で免許停止中に、レース用に改造した車で制限40キロの道路を時速100キロ以上で走行、原付バイクに激突して歩道へ弾き飛ばし、原付バイクの男性と歩道にいた女性を死亡させたというケースだった。
もう1件は禁錮5年6月。睡眠時無呼吸症候群で渋滞の車列に突っ込み、4人死亡、2人が重傷というケースだった。

遺族の方々からすれば、たとえ被告人が死刑になっても到底納得できないだろう。失われた命、暖かい命は戻らないのだ。

じゃあどうすればいいのか。
遺族・被害者の精神的、経済的ケアーをしっかりやると同時に、交通事故で被害者が出ないようにすること、それしかないと私は思う。
交差点は最も事故が起こりやすい。事故った車が逸走して歩道へ飛び込むことは普通に起こり得る。頑丈な遮蔽物を設けて、歩道で信号待ちをする人たちを守ろう。
そういう考え方は、しかし一般的ではない。

大津の事故現場となった交差点
大津の事故現場となった交差点

運転者たちが交通法規を守れば事故は起こらない。守らせるためには取り締まりをやればいい。守らず事故を起こす者は厳しく処罰すればいい。そっちの考え方が一般的だ。
だが、交通取り締まりの検挙率は極めて低い。無謀な運転をする者はいる。また、人間に不注意、ついうっかりはつきもの。どうしても事故は起こる。
そうして、大事な命が失われ続けていくのだ。私は残念でならない!

ちなみに、禁錮刑について少し触れておこう。以下は刑法だ。

(刑の種類)
第九条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

懲役刑より禁錮刑がほうが、刑種としては軽い。
交通事故の場合、事故だけなら禁錮刑だ。飲酒や無免許で事故を起こしたり、事故のあと逃げたりすると懲役刑に処される。

懲役刑は「刑務作業」を義務づけられる。家具や靴や文房具などをつくる作業だ。
禁錮刑には刑務作業はない。けれど退屈に耐えられず、希望して刑務作業をおこなう人がほとんどだという。

(今井亮一)

今井亮一
今井亮一

今井亮一【いまい・りょういち】
交通違反・取り締まりを取材、研究し続けて約40年、行政文書の開示請求に熱中して約20年。裁判傍聴マニアになって17年目。『なんでこれが交通違反なの!?』(草思社)など著書多数。雑誌やテレビ等々での肩書きは「交通ジャーナリスト」。2020年の目標は東京航空計器の新型オービス(レーザー式)の裁判を傍聴すること!

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今井亮一の交通違反バカ一代!
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