2019年12月23日、マークX生産終了。マークXがチャレンジしたセダン復活の足跡

■マークXはいかにして誕生したか

2019年12月23日にトヨタのマークXの生産が終了しました。マークXはマークⅡの後継でありながら、マークⅡからの脱却を掲げて新時代の高級セダンを目指しました。セダン復活の使命を受け、2004年の初代誕生から終焉までの15年間を振り返ります。

高級セダンの代名詞である「ハイソカー(ハイソサエティカー)」という和製英語とともに一大ブームを起こしたマークⅡも、初代から30年を過ぎ21世紀を迎えると、その勢いに急速なブレーキがかかりました。

それは、ユーザーのライフスタイルが多様化し、セダンのユーザーがSUVやミニバンなどに流れたためでした。バブル期の1980年代後半にはマークⅡの月販台数は2〜2.5万台だったのに対して、2000年に入ると最大で1/10近くまで落ち込んでしまいました。

このマークⅡの衰退を何とか食い止めたい、セダン復活を成し遂げたいという強い想いから2004年に新たに再スタートしたのが、後継のマークXでした。

■ユーザーの若返りを狙ったマークX

FRセダンを好むユーザーとともに進化し上級車ブランドを構築したマークⅡですが、2000年を過ぎる頃にはオーナーの平均年齢は60歳程度まで高齢化していました。マークⅡ復活のためには、ユーザー層を広げる若返りがぜひとも必要でした。

ユーザーの若返りを狙って2004年に登場したのが、後継車のマークXでした。ネーミングは、将来への期待と可能性を込めて「数学で未知数を意味するX」を採用。また、初代マークⅡからカウントすると、10代目(Xはローマ数字で10)に相当します。

ターゲットユーザーは、マークⅡよりも一世代若い40歳代半ばから50歳代半ばに引き下げられました。

MarkX-1
マークⅡの継承車初代マークX

●スポーティさを強調した初代マークX(2004年〜2009年)

クラウンと同じプラットフォームを使いながら、全長は110mm、全幅と全高は5mm短くしました。最大の特長は、フロントフードを長くしたスポーティなフォルムです。

エンジンは排気量2.5Lと3.0Lで、いずれも長年採用してきた直6からV6へ変更し、トランスミッションは6ATと5ATを搭載しました。これは、2003年発売の12代目ゼロクラウンと同じ仕様ですが、マークXの方がボディは軽いので当然ながら軽快でスポーティな走りができます。

さてマークXによる新世代化は成功したのかというと、販売台数は目標に近いレベルを維持しましたが、狙いのユーザーの若返りについては思惑通りにはいかなかったようです。

MarkX-2
初代を進化させた2代目マークX

●先代を進化させた2代目マークX(2009年〜2019年)

フロントピラー付け根を80mm前にリアピラーは30mm後ろにすることで、全体のフォルムをスムーズにして、先代よりもさらにスポーティ感を強めました。一方で、全幅の拡大やドアトリムの形状変更などによって室内空間や荷室空間を確保しました。

エンジンは、先代の3.0Lを3.5Lに拡大して2.5Lと3.5Lの組み合わせ、トランスミッションは6ATのみにしました。また、サイドエアバックやカーテンエアバックを標準装備としたものの、車両価格は先代よりも10万円安価にして、既存のユーザーが購入しやすい設定にしました。

しかし、フルモデルチェンジといっても全体としては先代のイメージと大きく変わらず、目新しさに欠ける2代目はさらに販売台数を減らしました。昨年の販売台数は約3900台まで減少し、遂に前身のマークⅡから51年続いた高級FRセダンが終焉を迎えました。

■最後に

比較的手頃な価格でありながら完成されたFRの高級スポーツセダンのマークXが、その仕上がりとは無関係に市場から撤退してしまうのは残念です。

限られたリソースで今後CASE(コネクテッド、自動運転、シェアサービス、電動化)を効率的に進めるためには、例えトヨタといえども車種整理は避けられず、販売台数の少ないモデルが消え去るのは残念ながら致し方ないということでしょうか。

(Mr. ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
続きを見る
閉じる