トヨタグループのソフトウェア開発の最前線。「TRI-AD」の日本橋の新オフィスが本格稼働

■自動運転に欠かせないソフトウェアを生み出す場

2019年12月17日、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)は、同年7月に移転された新オフィスの全てのエリアを本格稼働し、報道陣にその一部を公開しました。日本橋室町三井タワーに入居するTRI-ADは、トヨタ、デンソー、アイシンが出資し、共同で技術開発を拠点で、自動運転に対応するソフトウェア開発の最前線。

トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント
トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)のエントランス

東京・日本橋に拠点を置いたのは、江戸の頃から街道の拠点であり、文化の発信基地であり続けたこと、現在も地理的に名古屋と行き来しやすい場所にあるということもあるそうです。1200名のキャパシティがあるというTRI-ADは、現在約600名が在籍。新規採用90人のうち約半数以上が外国人で、女性も数多く活躍しています。

オフィスオープニングセレモニーでは、普段関係者以外立ち入り禁止のオフィススペースだけでなく、教育の場である「Dojo(道場)」、健康的な食事を提供するダイニングスペース、心身ともにリフレッシュできるスペースなど、エンジニアのパフォーマンスを最大限に引き出すオフィスやスペースも披露されました。さらなるイノベーションを目指すとしています。

また、日本橋というロケーションを活かし、地域との交流や、最先端の技術開発に取り組む世界中のスタートアップ企業、ITやAIに関心を持つ次世代との繋がりをさらに強めたいとしています。

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TRI-ADのジェームス・カフナーCEO

Googleの自走車開発チームの創設メンバーであるジェームス・カフナーCEOは、ハードよりも開発サイクルが圧倒的に早いソフトウェア開発において、「カイゼン」などで一般にも知られているトヨタ生産方式を「TPS four Software」として、ソフトウェアにも適応させ、増え続けるクルマのソフトウェア開発に対応するとしています。

TRI-ADでは自動運転の世界をリードするため、世界中から優秀な人材を集め、その拠点となるのが日本橋のTRI-ADになるわけです。

主な柱は、「トヨタグループのソフトウェア開発を刷新する」「自動運転技術開発をスピードをもって牽引する」「イノベーティブな企業カルチャーを造り上げる」の3つ。

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TRI-ADの鯉渕 健CTO(最高技術責任者)

TRI-ADの鯉渕 健CTO(最高技術責任者)は、自動運転時代も「すべての人に移動の自由を提供」すべく、個人(オーナー)向け、その他公共向けの両方共に注力し、2020年にはお台場でレベル4の同乗試乗の機会を提供したいとしています。

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2020年にはお台場でレベル4の同乗試乗の機会を提供するとしている
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最新のテスト車両。ルーフに搭載されているセンサー類は水冷化されているそう
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道場も用意し、社員研修にも力を注ぐ

報道陣に公開されたのは、18FのUX-UIのオフィス、20Fには、スケルトンな会議室など多彩なスペースがあり、「道場」では、OJTや語学などの研修も行われるそうです。

■江戸から続く交通の要衝である日本橋をトヨタ自動運転の拠点に

今回、新たにオープンしたエリアは「Inspiration」をテーマにした「エントランス」があり、エントランスに「流れる川」はクルマの製造過程で出たガラスの廃材(廃ガラス)からできているそう。社員の結束を象徴する1000個のカンパニーロゴを組み合わせたアートウォールを横に橋を渡ると、30mの巨大スクリーンと3Dサウンドが来場者を迎えます。

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廃ガラスを使って流れる川が表現されている
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クリエーターが自由に表現できる場を数多く用意

「High Productivity」を掲げる会議エリアは日本橋の路地を模しているそう。暖簾をくぐることで会議に集中する気持ちを整える狙いがあるとのこと。また、路地の奥には、PITと呼ばれる会議の前後に気軽に話せる場があり、議論を深め生産性を高めることができます。

和室会議室など、会議室はすべて異なる仕様になっていて、多様な会議室から目的に合わせて選ぶことができます。また、「プラザ」も設けられています。眺めの良い景色と人工芝に囲まれたスペースでは、仕事から離れてハンモックやクッションにもたれながら考えることで、仕事に活かせる発想を得ることが狙い。ほかにも、リチャージルームやフードストリート、ダイニングアベニュー、カフェ&ラウンジなども用意されています。

TRI-ADは、単なるソフトウェアのラボではなく、シリコンバレーのイノベーションと精緻な日本のものづくりを繋ぎ、安全なモビリティ社会の実現を目指すとしています。米国と日本の時差により、24時間とはいかなくても1日のうち長い間、日本もしくは米国でソフトウェア開発が進むことになります。

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TRI-ADには、トヨタ、デンソー、アイシンが出資する

ほかにも日本橋という立地を生かし、人やテクノロジー、カルチャーの「架け橋」になりたいとしていて、その活動の一環として先述した社内に「Dojo(道場)」をオープン。ここでは、目まぐるしく変化する環境においても、常に必要とされるマインドセットとスキルを身につけられるプログラムを用意するとともに、今後社外にも公開していく予定だそうです。

加えて、未来のモビリティをともに実現する次世代の人々との交流・育成を目的として、「AIエッジコンテスト」「自動運転AIチャレンジ」の協賛、未踏アドバンスト事業にプロジェクトマネージャーとして参画、エンジニアによる国内外の学生向けのレクチャーなどが計画されているそう。

2020年1月18日、19日には、18歳以下の中高生を対象とした競技会形式の産学連携AI教育プロジェクト「U-18シンギュラリティバトルクエスト」に協賛し、同競技会の決勝戦を弊社で実施予定だそう。基礎的なAIの開発体験を通してAIをより身近に感じてもらいながら、近未来の担い手である中高生の「AIリテラシー」の向上と「AIアスリート」の育成を支援していくとしています。

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TRI-ADがトヨタグループの自動運転開発(ソフトウェア)を推進する

TRI-ADでは、自動運転領域、UX-UI、高精度地図、シミュレーションなど最先端技術が開発されていて、簡単にいえば自動運転分野をアジャイル開発(アジャイルは素早いという意味)する場。特別に報道陣に公開されたのはUX-UIのオフィスで、「Arene」と呼ばれるソフトウェア開発のプラットフォームにより、ソフトウェアをアジャイル開発で継続的にアップデートすることで、ユーザーに継続的に価値を提供できるようになるそう。今回は、シミュレーションを使った自動運転と手動運転の切り替えなどが公開されました。

(文/塚田勝弘、写真/塚田勝弘、トヨタ自動車)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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