2018JCOTY受賞のボルボXC40は、軽快でトルクフルなファミリーSUVだけど、もうチョイ重厚感も欲しい…かな?【頑固一徹 和・試乗】

■歴史的な大発明「3点式シートベルト」の生みの親がボルボ!

毎年末に発表される日本カー・オブ・ザ・イヤー(JCOTY)。第40回となる2019-2000は「トヨタ・RAV4」が受賞しましたね。では前年の2018-2019は何だっけ?といえばコレ、2018年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーにも輝いた「ボルボXC40」でした。

いまだに日本でも好調なセールスを続けていますが、その総合性能はいかなるものなのか? 国際モータージャーナリスト・清水和夫さんの当時のインプレッションを、アーカイブで見てみましょう!

●もうチョイ重厚感も欲しいけど、このキャラクターもありかな?

今乗っているクルマはボルボXC40 T4 AWD。ボルボは新しく生まれ変わって、ひとつのプラットフォームを作ってそれをベースに様々なモデルを作っていますね。SUVのXCシリーズと、セダンのS、ワゴンのV。

XC40を試乗中の清水和夫さん
ボルボSUVの三男坊が、このXC40。軽快でトルクフルなのがウリです。

ボルボと言えば安全技術で一過言ある自動車メーカーです。元々、3点式シートベルトを考案したのがボルボなんです。3点式シートベルトのパテントを公開して、多くの自動車メーカーが使った…という歴史があります。まさに自動車史に残る偉大な発明を、安全のためにボルボは独り占めしせず「世界のみんなで使おうね!」ということになったんです。

ということで、安全に関してボルボは大きなDNAの中に入っています。

XC40のエンジン
2L 直4ターボは190ps、300Nmのパワー&’トルクを発生。

このXC40、エンジンは2L 4気筒ターボですけど、このターボも出力の大きいターボと小さいターボ、あるいはスーパーチャージャーと組み合わせたり、あるいはプラグインハイブリッドでモーターと組み合わせたり。

ボルボはひとつの基本となるパワートレインとボディのプラットフォームで多様なものを作るというような戦略に長けていますから、デザインも非常にプレミアムな感じがしてきて、すれ違ったときにBMW、アウディ、メルセデス、レクサスと、何ら変わらない質感、デザインの存在感というのがありますね。

オフロードを走るCX40
オフロードよりも、高速走行中は直進性が乱れる感あり。

エンジンは2L ターボチャージャー190ps・300Nmですけど、2000rpmくらいからアクセルを踏んだ瞬間のターボのタイムラグが無く、すぐにツッとトルクが出る感じがあって、非常に走りやすいと思います。

とにかくハンドリングか軽快で、スポーティでトルクもあって…という感じで悪くはないですね。でもなんかちょっとね、昔のボルボと比べてなんだろ…ちょっと軽いかな?と。

XC40のフロントビュー
最近はステアリングに手ごたえを感じられるクルマが少ない? 軽快ではあるんだけど。

最近、多くのクルマがこういう軽快感というのを出してきているので、そういう意味では時代のトレンドにのっていると思いますけど、もうちょっとドッシリ、重厚感の有る乗り心地でもいいな?と。

今日は東京から中央高速で来ましたが、ちょっと道の悪いところを高いスピード領域で走ると、上下の動きと左右のヨーイング方向の動きがあり、直進性がちょっと乱れているかな、みたいな。だからステアリングはしっかり握って進路を乱さないようにコントロールしなくてはいけません。

XC40のリヤビュー
60、90の兄たちがいるXC40は三男坊!

一応LKAS(エルキャス/車線維持支援システム)が付いてはいますが、これはまだちょっとサポートしてくれるくらいで、車線をちょっと逸脱したときにアシストしたり警報を出してくれたりするくらい。ただ、前後のACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)はミリ波レーダーを使って前のクルマを程よくロックオンして上手く追従してくれますね。

ロングドライブ、今回東京〜富士山往復+αで得た印象は、良きファミリーカーとしてはこのセグメントの中で非常に魅力的だなと思いますね。ただもうちょっと重厚さがあっても良かったかな?という気がするんですが。でもこの上に60とか90が控えていますから、一番下のXC40とすれば三男坊ですよね。こういうキャラクターを意図的に与えたというのも理解はできます。

XC40の室内
白いシートがオシャレ!

●テクノロジーの進化で、五感に感じるドライビングが出来なくなっている?

シフトもバイワイヤー化しているので、プリウスのシフトじゃないですけど、Rに入ったりDに入ったりするのが、ここのレバーだけではちょっとね。

触覚に、手にコツンとこないですから、どうしてもインジケーター見なくてはいけないとか、メーターパネルで今Dに入ったかRに入ったのかを見なくてはいけない…というところがあるので、こういうものももうちょっとこれからHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)というか、DとかRに入ったときに手のひらにちょっとポーンと感じるものが、触覚として欲しいなと思いますね。

XC40のコクピット
安全性能もしっかりのボルボ。

どんどんテクノロジーが進化してバイワイヤー化していくと、人間の感覚、特に手のひらとか触覚で感じるものが得られにくくなってきています。デジタルですから「メーターパネルに表示しただろ!」って言われるんですけど、そんなものはメーターを見なきゃダメで、やっぱりドライバーはしっかり前を見ているわけですから、そういう人間のもっと五感を使えるようなHMIがこれからの課題かなと思いますね。

XC40のシフト部分
手に感じるシフト感が感じられず、いちいちメーターを見なくてはいけない最近のクルマ。ン〜。

まぁ、ボルボはその領域のことは比較的よく理解できている自動車メーカーだと思うので、もっともっとその領域を深く研究してもらって、使いやすいクルマの開発をお願いしたいですね。

(試乗:清水 和夫/アシスト:永光 やすの/取材協力:ボルボ・カー・ジャパン)

総合評価
総合評価は星4ツです!

【頑固一徹 総合評価】
★★★★

5段階評価
5段階評価はオール4。

【頑固一徹 評価ポイント】(5段階評価)
パワートレイン:4点
シャシー性能:4点
インターフェース:4点
(※Vol.9までは5段階評価をしています!)

XC40の走り
緑生い茂る中を軽快に走るXC40 T4 AWD インスクリプション。

【SPECIFICATIONS】
車名:ボルボ XC40 T4 AWD インスクリプション
ボディサイズ:全長4425×全幅1875×全高1660mm
ホイールベース:2700mm
トレッド前後:フロント1600mm/リヤ1625mm
車両重量:1670kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
エンジン排気量:1968cc
ボア×ストローク:82.0×93.2mm
エンジン 最高出力:140kW(190ps)/4700rpm
エンジン 最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1400〜4000rpm
圧縮比:11.3
使用燃料&燃料タンク容量:無鉛プレミアム&53L
トランスミッション:電子制御式8速AT
駆動方式:全輪駆動(AWD)
最小回転半径:5.7m
乗車定員:5名
サスペンション:F マクファーソンストラット/R マルチリンク
ブレーキ:Fベンチレーテッドディスク/Rディスク
タイヤサイズ:F&R 235/50R19
燃料消費率 JC08モード:13.2km/L
車両本体価格(税込):5,090,000円

【清水 和夫 プロフィール】
1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業

清水和夫プロフィール
東京モーターショー2019会場にて、バイクを見つけて乗ってみたシミちゃん。乗用車、4輪レーシングカーといろいろ乗れど、2輪は「股が痛くてダメだ!」とのこと(笑)。

1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。

【頑固一徹試乗とは?】
国際モータージャーナリスト、清水和夫が斬る試乗インプレッション『頑固一徹テスト』。頑固一徹・清水和夫が独自の目線でチョイスした新型モデルを、パワートレイン、シャシー性能、ヒューマンマシンインターフェイス(HMI)の3分野で評価、採点し、その合計点によって5段階で評定します。

■頑固一徹 総合評価指数
1〜3点→★
4〜6 点→★★
7〜9点→★★★
10〜12点→★★★★
13〜15点→★★★★★

■頑固一徹テスト 試乗インプレッション
評価軸(3項目)&評価ポイント
パワートレイン 5段階評価(1〜5点)
シャシー性能  5段階評価(1〜5点)
ヒューマンマシンインターフェイス  5段階評価(1〜5点)

【関連リンク】

StartYourEngines HP
https://www.startyourengines.net

国際モータージャーナリスト、清水和夫が主宰する自動車専門動画ウェブメディア。クルマの限界性能と安全性を徹底的に試すダイナミック・セイフティ・テスト(DST)を始め、国内外の新車インプレッション、注目度の高まる先進安全技術、自動運転など、クルマに関するあらゆるジャンルの動画をサイトアップしています。ぜひぜひ!チャンネル登録のうえご視聴ください。

StartYourEnginesX
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX

この記事の著者

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、スーパー耐久やGT選手権など国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。
自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。clicccarでは自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』でも公開している試乗インプレッションや書下ろしブログなどを執筆。
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